【著者に訊け】能町みね子さん/『雑誌の人格 2冊目』/文化出版局/1620円
【本の内容】
俎上に載せた雑誌は39誌。すでに休刊になっているものもある。雑誌を読み込み、まるで実際に存在している人間のように鮮やかに人格化していく。例えば「CanCam」。〈自意識は弱めで、夢見がちで受動的。素朴で垢抜けていない、コンサバファッションを好む良い子〉。これだけじゃない。職業は〈金融系OL〉、居住地は〈千葉県船橋市〉の23才等々。妄想あふれるプロファイリングには、当該編集部から「スゴイ!」の声が上がることもしばしばとか。
夢見がちで受動的な「Can Cam」さん。ナチュラルに見せて策略家な「mini」さん。本もテレビも同じくらい好きな「ダ・ヴィンチ」さん。
いろんな雑誌に“独断と偏見”で人格を与える本の、「2冊目」が出た。「装苑」で連載を始めた2010年にはすでに「雑誌に元気がない」といわれていたが、「2冊目」のまえがきではそれが「弱っている」という表現に変わっている。
「でも、もう少ししたら底をついて、これ以上は下がらないんじゃないかという気もするんです。もちろんネットやインスタのほうが圧倒的に勢いがあるし、若い人はあまり雑誌を読まなくなっていますが、休刊も多いけど創刊もある。20代向けの雑誌も案外、新しく出たりするんですよ」
取り上げるのはファッション誌が多いが、爬虫類・両生類の飼育雑誌「VIVARIUM GUIDE」や日本犬専門の「Shi-Ba」など、この本を読んで初めて知るような専門誌も紹介され、どれも興味深い。地元の人がふつうに訪れるような本屋さんで見つけたそうだが、面白い雑誌はまだまだある、と希望がわくラインナップである。
「面白くない雑誌もいっぱい出てますけど(笑い)、面白い雑誌は、『これはやっぱり売れるよね』って思います。もともと、『小悪魔ageha』がむちゃくちゃ面白い、ということを書きたくて始めた連載なので、茶化すことはあっても、基本は『褒め』です」
イラストと文章で雑誌の人格を描いていく。
「使われている言葉づかいや登場している読者の特徴、後ろのほうにあるカルチャーページや読者投稿欄もよく読んで、年齢や趣味のイメージを固めていきます」
ぽっちゃり体形の女性をモデルにした「la farfa」は、創刊時に面白おかしくメディアに取り上げられたりもした。能町さんは、杖をついた(おそらく障害を持つ)女の子の写真が複数、自然な形でストリートスナップに掲載されていることなど、丁寧に読まなければ見過ごしてしまう、雑誌の“姿勢”も書きとめる。
「読者モデルの子が『よく書いてくれてうれしい』とツイッターで呟いていて。『やった!』と思いました」
撮影/藤岡雅樹、取材・構成/佐久間文子
※女性セブン2018年4月19日号