平安時代より人々の憩いとなっていた桜の花見。満開の花を愛でながら、仲間と飲み語らう日本古来のこの文化が、今“別の側面”で注目を集めている。
心と体を軽くして、頭痛を劇的に改善。さらにはがん治療の現場でも重用されるという「桜の健康作用」について、医療現場でアロマセラピーを導入する貝塚病院(福岡県)の麻酔科医・松下至誠先生が語る。
「桜のにおい成分『クマリン』と『ベンズアルデヒド』によるものです。あの桜特有の甘い香りは、体の副交感神経に働きかけ、精神をリラックスさせる作用があります。抗菌作用も非常に高く、医学界でも注目の成分なんです。
当院では、桜のにおい成分を『低温真空抽出法』という手法によって抽出し、アロマオイルにして使用しています。リラクセーションを目的に患者さんに提供しており、『頭痛が改善した』という声も多くあがっています」
桜エキスの効果を最大限に引き出すのは、直接的に“摂取”する方法だ。
「水に入れて飲むのです。当院では、抽出したエキスを水やお茶に入れて飲む方法があります。500mlに1~2ml入れ、1日かけて少量ずつ飲むのですが、精神安定や頭痛が改善することがあります。患者さんからは、『そこらへんの頭痛薬よりもずっといい』という声をよく聞きます。片頭痛持ちの看護師やスタッフからも支持されています」(松下先生)
同じように、桜エキスを直接摂取する方法として、“食べる”という選択肢もある。
その食材こそ、日本人になじみ深い桜餅だ。桜餅は桜の葉を塩漬けしたもので、あの甘い香りはまさにクマリンによるもの。桜餅を食べ、お茶を飲んでほっと一息―そんな至福のひとときが、心身の健康に確かに役立つのだ。
この花見のシーズン、公園などの桜の落ち葉や花びらを利用すれば、自宅でも桜エキスを楽しむことができる。貝塚病院に桜アロマを提供している桜サイエンスビューティー株式会社代表の川人紫さんが解説する。
「桜の花の塩漬けでもいいし、梅酒のようにホワイトリカーや焼酎に漬け込むことで『桜酒』をつくるのもオススメです。2週間ほど漬けたら飲み頃になります。氷砂糖も入れましょう。シロップにするのもいいですね。桜の花を砂糖と一緒に煮込むんです。きれいな桜色が広がります。ヨーグルトやパンケーキにつけたり、スイーツとしても楽しめます」
松下先生が語る。
「まだまだ桜には健康促進作用があると思いますので、これからも科学的に分析するべく、丁寧にデータを集めていきたいと考えています」
今年の花見は、目に映る桜の光景だけでなく、“におい”も楽しんでみて。
※女性セブン2018年4月19日号