歴史は勝者によって作られる。我々はそれを知っているはずなのだが、「明治維新」と聞くと思考停止してしまうようだ。維新から今年で150年。著書に『明治維新という幻想』がある森田健司氏がこれまでタブーとされてきた歴史の真実を暴く。ここでは岩倉具視が率いた「岩倉使節団」を題材とする。
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「明治維新が起きなければ、日本は欧米列強の植民地となっていた」と言われる。しかし、私はそんなことはないと断言できる。
それを裏付ける状況証拠が、明治4年(1871年)から約2年に亘ってアメリカ、ヨーロッパに派遣された岩倉使節団だ。それほどのんびりと海外に行けるのだから、欧米列強による日本の植民地化をまったく想定していなかったと言える。
さらに当時、来日していた外国人の記録を見ても、植民地化への動きは一切認められない。
江戸期の日本は幕藩体制によって地方分権が徹底されており、幕府と諸藩の連合軍のような状態だった。たとえ一つの藩を撃破しても別の藩がいるため、敵に回すのは非常に面倒であったし、日本を植民地化するには多くの犠牲を払わなければならなかった。列強はそれならば通商で利を得ようと考えたのだろう。
【PROFILE】森田健司●1974年兵庫県生まれ。京都大学経済学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程単位取得退学。博士。専門は社会思想史。著書に『西郷隆盛の幻影』、『明治維新という幻想』(ともに洋泉社)などがある。
※SAPIO2018年3・4月号