急増する外国人留学生の中で約4割とダントツに多いのが中国人だ。『ルポ 中国「潜入バイト」日記』(小学館新書)を上梓した西谷格氏は東京都内にある中国人向け学生寮で管理人として働くことで、彼らの生活の実態を取材した。
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私は東京都内にある中国人向け留学生寮の管理人として働き、各部屋の掃除や見回りなどを任されていた。学生が退寮した際には大掃除を行なったが、想像を超えるような出来事に遭遇することも少なくなかった。
最初に掃除に行った寮は、2DKの居室に二段ベッドを詰め込み、4人で共同生活を営んでいた。寮費は水道光熱費込みで1か月6万円。駅から15分以上歩く上に築30年以上は経っていそうなこの物件の1か月の賃料は、せいぜい12万〜13万円だろう。水道光熱費を含めた管理コストが2万〜3万円と見積もると、一部屋あたり5万〜10万円ほどの利益になる。それが30部屋もあるというから、なかなか良い商売である。
掃除をしながらシンク上の吊り戸棚を開くと、何やら大量の封筒がバサっと積んであった。赤や黄色など、警告的な色をしている。見ると、携帯電話会社やクレジットカード会社からの督促状だった。しかも弁護士名義で届いており、「最終警告書 民事訴訟等の法的措置の検討に移らせていただくことを最終警告いたします」などの文言が大きな文字で印刷されている。
督促レベルが最終段階に達しているのに、そのまま祖国にトンズラしてしまったのだろう。室内には床のあちこちにゴミが散らばっており、ゴミ屋敷に近い状態の寮を見て、一緒に掃除をしていた中国人の同僚は「ああもう中国人ったらー!」と冗談交じりにボヤいた。
さらに彼は「もし自分が大家さんだったら、こんな状態を見て、部屋を貸したいと思う?」と言ってきた。ある程度日本に滞在経験のある中国人であれば、「中国人が部屋を借りにくいのはそれなりの理由がある」と分かっているようだ。
学生たちは部屋を借りやすくするためにこんな工夫をしていたという。不動産屋と話す際に、「東大志望」と堂々と話すのだ。すると大家さんもなんとなくOKしてしまう。でも日本語はカタコトで、とても1年で合格できるとは思えない。
ここにも中国人特有の悪意なき大風呂敷を広げているのではと感じ、それと同時に生き抜く力強さのようなものを感じた。
【プロフィール】にしたに・ただす/1981年、神奈川県生まれ。フリーライター。早稲田大学社会科学部卒。地方新聞の記者を経て、フリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポートした。2017年の冬、中国人向けの学生寮の管理人を務めた。中国での潜入アルバイトについてまとめた『ルポ 中国「潜入バイト」日記』を3月29日に発売した。