山形空港から月山や朝日岳、蔵王などを遠く望む山形県西村山郡河北町。生産量日本一を誇る『かほくスリッパ』の歴史をたどります。
最上川と寒河江川に囲まれた河北町。春には同町谷地地区の「ひなまつり」でにぎわい、夏には町のシンボルである紅花が、あちらこちらでオレンジ色の花を咲かせ、風光明媚な景色が広がる。
「明治時代から続く草履作りを地場産業として、河北町は発展してきました。しかし、昭和40年代に入ると生活様式が様変わりし、草履からスリッパへ産業も移っていったのです」
と、河北町商工観光課の阿部直人さんは語る。
全盛期には25ものスリッパメーカーが存在したが、輸入品の増加に伴い減少。現在では6社を残すのみだ。
「このままではスリッパ産業が廃れてしまうと危機感を持った山形県スリッパ工業組合の人々が、この地で作るスリッパを『かほくスリッパ』と名づけて、4年前から全国に向け、精力的にPRするようになったのです」(阿部さん・以下同)
輸入ものの多くが機械で作られるのに対して、かほくスリッパは1点1点手作業による縫製を行っている。
「草履を作っていた頃から、すべて手作業で、日本人の足の形にフィットしたものを作ってきました。履き心地はもちろん、耐久性にも優れており、丸洗いができるものが多いのも特徴です」
また、高品質な生地を使用し、見た目が凝ったデザインになっているのも特徴だ。
「阿部産業が作っている『KINU HAKI』は、米沢織りの絹で作られた最高級品。工場長しか作れないという特殊な縫い方で、1足2万円するのですが、全国から注文が殺到。今では数か月待ちの商品です」
そんな高級スリッパのイメージも強いが、地元では、お手頃価格のユニークなものも人気を得ている。
「山形県は卓球が盛んで、河北町でも老若男女が親しんでいます。それで、卓球をもっと身近にしてもらおうと、ラケットに見立てたスリッパを作ったところ、これがとても好評で、地域でもスリッパ卓球大会を開催するなど、町民の皆さんが健康のために、汗を流しているんですよ」
夏は汗を吸収し、冬は保温効果のある、かほくスリッパ。デザインの種類も豊富だ。
※女性セブン2018年4月19日号