栃木県のご当地キャラに、とちぎテレビが2013年に考案したアニメ絵の美少女3人ユニット「まろに☆え~る」がある。その3人の司会による番組「まろに☆え~るTV」が、今年2月からドラゴンボールのモノマネ芸人らによる旅番組『まろに☆え~るTV~とちぎの旅!ワクワクすっぞ!』を地上波とYouTubeで放送している。ドラゴンボールの主人公・孫悟空が、強い敵と戦うことになるたび発する有名なセリフ「ワクワクすっぞ」のように、番組への期待と興奮が広がりつつある同番組について、イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、モノマネ芸によって成り立つ旅番組の面白さについて考えた。
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芸人は常に進化を求められている。一昔前は”面白い”だけで良かったが、現在は、それだけじゃ難しい。”面白い”ことに加えて、専門的な知識も求められる。特にクイズ、スポーツ、アニメ、家電などの知識を語れる芸人が重宝される。だからといって、それを追随しても意味がない。同じジャンルの知識を身につけても、ポジションを奪うことは難しい。
芸人はまだ誰の目にも触れられていないブルー・オーシャンを探す。結果、ガラパゴス諸島の生物達のように独自進化した芸人も誕生する。そのなかで、名作漫画『ドラゴンボール』のキャクターの見た目、アニメ版の声、思想を含めて完コピするドラゴンボール芸人(通称・DB芸人)に今注目が集まっている。
DB芸人は、誇り高きサイヤ人の王子・ベジータを完コピするR藤本から始まった。今では完コピされるキャラクターも増え、総勢15名以上の一大勢力に。事務所の垣根を超えて結成された劇団『ドラゴンボール』とも云える軍団だ。`
「こんな脇役のキャラまでいるの?」と驚くDB芸人だが、肝心の主役がいなかった。そこで登場したのが、主人公の孫悟空の声を演じる声優・野沢雅子のモノマネをするアイデンティティ田島(正式にはDB芸人ではない)の存在。声優のモノマネといったトリッキーな形ではあるものの、最後のピースがハマる。こうしてDB芸人は盤石の形なった。
そんなDB芸人は、現在『それがまろに☆え~るTV~とちぎの旅!ワクワクすっぞ!』に出演中だ。ベジータ役のR藤本、フリーザ役のBAN BAN BAN山本、野沢雅子役のアイデンティティ田島とその相方のツッコミ役、見浦の4人で栃木をめぐる。とちぎテレビ制作の地上波放送番組ではあるが、YouTubeでも公式配信中だ。
『まろに☆え~るTV~とちぎの旅!ワクワクすっぞ!』は、スタンダートな街ブラ番組。栃木県の魅力を紹介するために、動物園、遊園地、いちご農園といったスポットを歩きながら発見してゆく。出演する3人だけがイカれている。ベジータ、フリーザ、野沢雅子が商店街を並んで歩く。その絵面だけで面白い。
ロケ中、DB芸人は眼に映るもの全てをドラゴンボールに絡める。いちご農園のビニールハウスで太陽の暑さを感じれば、強烈な光を放ち相手の目をくらます技を浴びたように目を覆い「太陽拳が凄い!」とR藤本。一時が万事この調子で、ロケ中、常時”DBなぞかけ”状態。ただ一人のツッコミ役となる見浦は大変忙しい。
カートサーキットへ行けば「オラとピッコロが免許とりに来たとこ?」とボケるアイデンティティ田島。見浦は「ありましたね。アニメオリジナルのね」と補足説明。孫悟空が妻のチチに催促され、ピッコロと共に免許をとるため自動車教習所に通う話は、原作漫画にはないアニメのために作られたもので、バトルはないがギャグ満載の人気エピソードだ。
形が丸いものを見れば「コレって、ドラゴンボールじゃあないか」とボケる一堂に、「確かに形は似てるけどね!」と見浦が返す。宇都宮名物のひとつ餃子店を訪れた際は、DB芸人は餃子をギョウザではなくDBキャラクターにちなんだ読み方「チャオズ」と何度も言うのだが、そのたびに「餃子だから!」と口角泡を飛ばす。