3月5日、激震が走った。名古屋市教育委員会が市立小学校におけるすべての部活動を2021年3月末をもって廃止すると発表したのだ。近年、教師の負担が大きいと注目を浴びている部活だが、一流アスリートは部活での経験をどう捉えているのだろうか?
名門・青森山田中高で卓球に勤しんだ、水谷隼選手に話を聞いた。
「ぼくの人生でいちばん楽しかったのは間違いなく中高の6年間。だから、部活が縮小傾向にあると聞くと、寂しい気持ちになります。子供たちにはぜひ、部活を経験してほしいのですが…」
2016年のリオ五輪において日本人初の卓球シングルスメダリストという快挙を成し遂げた水谷隼選手(28才)。彼が青春を捧げたのは、福原愛(29才)らを輩出した青森山田中学・高校の卓球部。世界を目指す若きアスリートたちが全国からやって来る、超名門スポーツ校だ。
「みんなプロになるために入部してきているから、普通の部活にありがちな厳しい上下関係はなかった。卓球が強ければ雑務も免除されるなど、完全に実力の世界でした。かといってギスギスした雰囲気であるわけでもなく、強い選手をサポートして行こうというムードだった」
水谷選手が部活を通して得たものは、技術はもちろん、勉強との両立方法や共同生活の経験だったという。
「とはいえ、やっぱり卓球がうまくなりたかったから、勉強と卓球は1対9の配分(笑い)。必要最低限のことだけを早くこなすすべを身につけて、あとは卓球漬けの日々でした。
寮での共同生活は、はじめて親元を離れたこともあり、慣れないことの連続。掃除や洗濯など身の回りのことを自分でやり、同時に食事や体調管理などもするのは結構大変でした」
しかし、同じ目標を持つ仲間たちとの共同生活には大変さを上回る楽しさがあったという。
「今でも“青森山田会”と称して年に1回、当時のメンバーと会うのですが、みんな、“あの頃、いちばん楽しかったよね”と言うんです。当時の思い出で印象に残っているのは、みんなでゲームをやったこと。もちろん普段は真面目に練習をするのですが、たまに部屋にみんなで集まってゲームをするのがすごく楽しかった。
禁止されていたからこっそりやるんです。顧問の先生が来て、見つかりそうになったら“これはゲームじゃなくてパソコンです”とかみんなでかばい合って…(笑い)。今思えば、そうやって緊張をほぐしたり息抜きしたりする方法を学んでいたのかもしれないですね」
※女性セブン2018年4月19日号