今年も数々の名勝負が生まれたセンバツ高校野球。大阪桐蔭の春連覇の“原動力”となったのは、レギュラーとして奮闘する選手だけではない。むしろ、グラウンドに立つ機会が“少なかった”、あるいは“なかった”選手たちの存在が、絶対的な強さを支えていた。36年前の大阪・PL学園以来となるセンバツ連覇の快挙を成し遂げた大阪桐蔭について、『永遠のPL学園 六〇年目のゲームセット』の著者であるノンフィクションライター・柳川悠二氏がレポートする(文中敬称略)。
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怪物たちの噂を耳にしたのは2015年の秋だった。既に146キロを投げたという飛騨高山のスーパー中学生(根尾昂)に、異次元の快足外野手で、ソフトバンク・柳田悠岐のようにプロでもトリプルスリーが狙えるというポテンシャルの塊(藤原恭大)。ボーイズジャパンの4番(石川瑞貴)や佐賀の豪腕(柿木蓮)、近畿圏の強豪校からスカウトが相次ぐ滋賀の190センチ左腕(横川凱)──。
全国の中学硬式野球で名を馳せた彼らには共通点があった。いずれも進学予定先が、高校野球の名門・大阪桐蔭だったのだ。
3年後の2018年には、大阪桐蔭史上最強世代が90回目のセンバツと、100回目の夏の選手権大会を席巻する──。あまりの豪華な顔ぶれに、どこよりも早く、本誌・週刊ポスト(2016年3月4日号)でそう書いた。
フライング気味だったこの予見は、現実になりつつある。彼らの多くは昨年のチームから主力を張り、36年前の大阪・PL学園以来、史上3校目のセンバツ連覇を遂げた。監督の西谷浩一は言う。