今年最も強い風が吹いた4月6日、東京・銀座のど真ん中に位置する中央区立泰明小学校は、朝から物々しい雰囲気に包まれていた。校門の前には警察や警備員、PTAの腕章をつけた母親たちがずらりと並び、通行人に目を光らせている。校門から少し離れた場所には、パトカーも待機していた。
殺伐とした雰囲気の中、母親に手を引かれ、意気揚々と校門に入ってゆくのは、新一年生たち。この日は、同校の入学式だった。近隣の住民が言う。
「もう何年も泰明小の入学式を見てきましたが、この状況は前代未聞。子供よりも大人たちの人数が多くて、何だか異様ですよね…」
そんな周囲の心配をよそに、子供たちはシックな黒の制服を立派に着こなし、胸を張って歩いている。その手を引く母親たちの顔もまた、誇らしげだった。
今年2月、同校校長の和田利次氏が、実質的な制服にあたる「標準服」の刷新を決定。高級ブランド『アルマーニ』による一式8万円のものに切り替えると発表し、議論を呼んだのは記憶に新しい。
「子供の制服にしては高すぎる」「買えない家庭はどうするのか」といった批判が殺到した大騒動から2か月が経ち、入学式を終えた和田校長は、集結したメディアに対してこんなコメントを出した。
「入学式を迎えることができてほっとしています。学校に来るのが楽しみだと感じてもらえるよう、教育の充実に勤しんでゆきます」
校長が胸をなでおろした理由は、今年の新入生たちの服装にあった。ふたを開けてみれば、55名の新入生全員が“アルマーニ制服”をしっかりと着用していたからだ。兄弟2人を泰明小に通わせる母親が言う。
「世間で批判されているのは知っていますが、在校生の保護者からは非難は出ていないんです。むしろ『やっぱり質がいい』『かっこいい』と好評。下の子は今年入学なのですが、すごく気に入って、鏡の前で何度も着ていました。ただ、自宅で洗えないのは難点。汚れたときのために中のシャツや靴下もいくつか買って、計25万円でした。だけどそれだけの価値がこの制服にはあると思う」
学校の方針に納得して従うばかりか、「高級ブランドなら何でもよかった」と語る保護者もいた。
「孫の入学式で駆けつけました。アルマーニに限らずエルメスでも、シャネルでも、高級ブランドなら他のメーカーだっていい。なぜなら銀座という場所は“本物”を丁寧に、大切に使う素晴らしさを知っている人たちが集う場所。そこにある小学校にふさわしい制服は、やはりハイブランドだと思うんです。しかもこの泰明小は特認校といって、学区外からの入学を認めている学校です。うちもそうですが、別の区からあえて“泰明ブランド”に憧れて入学する子供が大半を占める。アルマーニでそのブランド価値が底上げされるのは、泰明小の保護者からすれば願ったり叶ったりなんです」(入学式に参加した女性)
※女性セブン2018年4月26日号