グラビア写真界の第一人者、渡辺達生氏(69)が還暦を迎えてから力を注いでいるのが、“人生最期の写真を笑顔で撮ろう”とのコンセプトで立ち上げた『寿影』プロジェクトだ。『寿影』とは、渡辺氏による造語で、商標登録されている。葬儀で使用される『遺影』の“遺”の文字には暗くて辛気臭いイメージがあると感じていた渡辺氏は、代わりにこれまでの人生を祝う意味を込めて、美しい響きを持つ“寿”を選んで命名した。
渡辺氏は、自然な笑顔を引き出すべく、撮影する人に「一品」を持ってきてもらって、それにまつわるエピソードを聞きながら撮影する。エモやんの愛称で親しまれている野球評論家の江本孟紀氏(73)が持ってきたのは、1000奪三振の表彰盾だ。
「ベンチがアホやから野球がでけへん」の球史に残る名言を残して球界を去ったエモやん。引退後はその毒舌ぶりを発揮し、球界を大いに盛り上げている。
「今のプロ野球は媚びてばかり。球団はユニフォームを配って球場に来てもらい、選手は球団の垣根を越えた友達付き合いで楽しく野球をしたがる。昔のような個性と技術で客が呼べる選手が見当たらない」
とかなり手厳しい。元々過去を振り返らないタイプで、終活の一環で断捨離も始めているが、唯一手元に残っているのが阪神時代に達成した1000奪三振を表彰した盾だった。