海外の恋人から荷物を託され、知らないうちに密輸の運び役に仕立て上げられる「ラブコネクション」。旅行先で知り合ったり、日本に来日した外国人との関係性から発展することが多かった手口だが、最近では婚活アプリや出会い系アプリによって、より身近なものになりつつある。ライターの森鷹久氏が、ラブコネクションがじわじわと広まる実態についてレポートする。
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覚せい剤の国内流入量、そして売買額が急増している──
4月3日放送のNHK『クローズアップ現代』(以下『クロ現』)は、薬物問題を追いかけてきた筆者にとっては大変に見ごたえのある内容で、食い入るように見入ってしまった。その中でも特に驚いたのは、恋愛感情を利用して運搬役を担わせる「ラブコネクション」についての言及があった点である。
「取引を秘密裏に行うには”善意の第三者”を噛ませることが重要。そうすることで足が付きにくくなり、捜査のかく乱も狙えるのです」
こう証言するのは、かつて覚せい剤取締法違反で数度検挙されたことのある元暴力団関係者の杉本和也氏(仮名・50代)だ。杉本氏によれば、薬物の仕入れから卸、小売りという流通ルートの中に、どこかに必ず「取引物が薬物かどうか知らされていない」人物、つまり善意の第三者を介入させていた。
覚せい剤など薬物の売人の多くが、前科や使用歴などから当局に監視されていたり、その筋の人間としてマークされている。当然、そういった人物と同氏が連絡を取り合ったり、実際に会ったりしていれば、当局は訝しむ。こうした当局の目を欺くためにも、善意の第三者を取り込むことで、流通経路を複雑化させたり、何よりも違法なものを運んでいる自覚がないので挙動不審にならないため「怪しまれることなく」取引を行えるというわけだ。
この「善意の第三者」が、冒頭で紹介した「ラブコネクション」により調達される。『クロ現』内では、薬物の売人が婚活サイトで知り合った、介護施設で働く女性の職場に薬物を届けさせる例を紹介していた。薬物関連に限らず、様々な犯罪現場で「ラブコネクション」は大いに活用されているという。外国人犯罪に詳しいライターが解説する。
「外国人が日本に滞在したいがために日本人女性と偽装結婚する、という話はよくあるが、最近は”覚せい剤取引”のためや、窃盗車両とその売買のためだけに、日本人女性と結婚する例もある。外国人はそのまま日本で暮らし、家庭まで持つこともあるが、目的はあくまでも違法行為によって莫大な利益を上げる、ということ。この場合の善意の第三者は日本人嫁や嫁の家族、場合によってはその子供です。表向きは別の商売をしている場合が多く、何も知らない家族が巻き込まれてしまうために、流通ルートがより複雑化し、捜査がしにくくなる」(外国人犯罪に詳しいライター)
特定国の名前を出すのは避けるが、日本国内の外国人が多い地域などに悪意を持ったニューカマーが合流し、薬物の売買やその他の違法行為に手を染める際に、絶大な効果を発揮するのが「ラブコネクション」である。しかし、女性を口説いて付き合ったり、家族まで形成するのには時間も労力もかかる。何より、目的達成前に別の事件を起こしてしまい、国へ強制送還される、といった例も多いようだ。そうすると『クロ現』で指摘されたように、より簡単により早く「ラブコネクション」を築ける出会い系サイト、出会い系アプリが、悪意を持った人々にとって重宝されるのは当然ともいえる。
前出のライターは、出会い系サイトやアプリを通じて安易に出会ったがために、いつの間にか犯罪の片棒を担がされたり、最悪の場合は共同正犯や主犯者になってしまうこともあると警鐘を鳴らす。
「出会った男性が覚せい剤の売人だったがために、ラブコネクションに利用された後は女性本人も覚せい剤中毒になった、という例が複数あるようです。
運び屋や受取人として利用され、さらに体ももてあそばれ、最後は客として最後までしゃぶりつくされる悲惨な例です。好きになった男が売人だった、ということで男をかくまったり、男の代わりに”シゴト”を請け負う場合も……。ほとんどの場合は、ラブコネクションに使われるだけ使われて、そのまま捨てられます。いつの間にか外国人の旦那が蒸発し、妻と子供は日本に取り残される……みたいなこともあります。外国人が多いとされるX県某町やY県某市では、中年女性が出会い系アプリを通じて外国人と一緒になる例が増えているようですが、少なくない人が騙されています」(外国人犯罪に詳しいライター)
もちろん、出会い系の利用も外国人と出会うことも、ごく普通の行為ではあるし、いちいち疑うことは差別的だとお叱りを受けるかもしれない。しかし、こうした”悪意を持った人々”の存在も知っておかなければ、自分を守る術はない。