学歴社会の是非については日本のみならず各国で議論されるところである。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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いま日本では、全国的な人手不足を背景に新卒学生の“売り手市場”が形成され、それに胡坐をかく学生が増えているという。これにともなって企業側が学生にもとめる基準もゆるみが顕著だと指摘される。
だが、7%近い成長が続くお隣の中国の事情は少し学生には厳しいようだ。
というのも大学卒の仕事が少なく競争が激しくなっていることをうけて、より高い学歴が求められているというのだ。
その現象を解りやすく示したのが、湖北省武漢市が公開募集した2018年度の公共施設職員募集の要領である。
一覧表になったそのリスト、洪山区城市管理委員会のさまざまな職種の中で、「公厠管理員」と記された欄の応募資格には「大卒」と書かれていた。
職種の「公厠管理員」とは公共トイレの管理者である。年齢制限も30歳以下となっていた。
これが公表されるとネット上で大きな騒ぎが起きた。
地元紙から全国紙までが大きく報じたが、この騒ぎを受けて取材に答えた洪山城市管理委員会の関係者は、「ここ数年、このポストはずっと大卒が採用されてきたので……」といった内容の答えをしていた。
ネットの書き込みには、「中国の学歴社会もついにここまできたのか!」といった嘆きなのか面白がっているのかよくわからない書き込みが溢れた。