昨今、ペットの飼い主の不注意による事故やトラブルは後を絶たない。2015年6月、大阪府高槻市ではこんな事故があった。60代女性が愛犬のミニチュアダックスフントを散歩させていると、その愛犬が交差点の向こうで散歩している柴犬を見た途端、突然吠えて走り出したのだ。
驚いた飼い主が思わずリードを手放してしまうと、偶然通りかかったランニング中の40代男性が暴走する犬を避けようとして転倒、側溝に落ちて右手首を骨折してまった。後遺症もあった男性は2016年11月に飼い主の女性に対し、損害賠償を求める裁判を起こすと、2018年3月23日に大阪地裁は女性に対し1284万円の支払いを命じる判決を下した。
さらに3月28日にも、リードにつながれていない大型犬に噛みつかれ、全治2週間のけがを負った大阪府の40才代の女性が訴えた裁判で、大阪地裁は飼い主に対し、約200万円の支払いを命じる判決を下している。
飼い主の不注意によって、思わぬ形で加害者になってしまうこともある。そうならないためには、まずどんなケースが過失となるかを知ることが重要だ。いくつか例を挙げて、過失となるか否か検証していこう。
【ケース1】
●散歩中近寄ってきた通行人が愛犬の頭を撫でたところ、突然手を噛んでけがをさせた
ペット問題に詳しい行政書士の福本健一さんが話す。
「こちらから行動を起こさず、リードも手にしっかりと持っていても、飼い主は何かしらのトラブルを想定していなければなりません。
例えば、相手が近づいてきた時点で、『手を出すと危ないですよ』と注意を促す必要があるのです。特に、普段から噛み癖のある犬なら尚更で、それを怠れば飼い主の過失は大きくなります。
また、たまにスーパーやコンビニに立ち寄る際、飼い犬を一時的に柱などにつないでいる人を見かけますが、トラブルになれば管理責任が大きく問われます。そもそも、人通りの多い場所で目を離していることが問題です」
【ケース2】
●公園で愛犬を放して遊ばせていたら、小さな女の子に飛びつきけがをさせた
「公園などの公共の場所での放し飼いは絶対にやめてください。飼い主は、『ウチの子は大人しいから絶対に大丈夫』と言いますが、動物は何をするかわからない生き物。リードを付けていない時に何かあれば、100%飼い主の責任です。特に、女性の顔に一生残る傷を付けたとなると、慰謝料が大幅に増額され、治療費を含めた賠償額が膨大になる可能性もあります」(福本さん)
【ケース3】
●庭で放し飼いにしていた愛犬が、隣家に侵入して庭を荒らし盆栽を壊した
「柵が壊れているなど、隣家に飼い犬が侵入できること自体が飼い主の落ち度です。当然、賠償責任が生じます。また、柵を付けていても、柵の隙間から手を差し込んだ子供が噛まれてけがをするケースもあります。この場合は、手が入る隙間のない柵を設置したり、“猛犬注意”のシールを貼って周囲に注意喚起しておくといった対策が必要です」(福本さん)
※女性セブン2018年4月26日号