大河ドラマや映画、小説の題材となる武将や将軍、維新志士たちがみな「聖人君子」だったかというと、さにあらず。人間臭く、あるいはだらしない面もあった。著書『ざんねんな日本史』(小学館新書)が話題の歴史作家・島崎晋氏が、偉人たちの“本当の姿”を明かす。
◆陰嚢が肥大化して歩けなくなった西郷どん
偉人たちの死に際には人間臭さが見える。大河ドラマ『西郷どん』で注目されるのが、西郷隆盛の最期の描かれ方だ。
不平士族を率いて西南戦争を起こすも制圧され、西郷が「もうここらでよか」と言い、鹿児島の城山で自刃して幕を閉じる場面は有名だ。
しかし、その最期は実はみじめなものだった。西郷が精彩を欠いたのは、健康状態に問題があったからとされる。いつからかは不明だが、象皮病という九州南部に多い風土病にかかり、皮膚が腫れ、陰嚢が肥大化し、一人で歩くことも困難だった。
西郷は写真を1枚も残さなかったため、遺体の確認は肥大化した陰嚢が決め手になったともいわれる。
◆上杉謙信は酒の飲み過ぎで早死にした
戦国時代、軍神と呼ばれた上杉謙信の最期も情けない。実は謙信の最大の楽しみは、酒を痛飲することだった。肴は何も食べず、ただ酒をあおる。その量は半端ではなく、馬上でも酒をあおり続けたという。
山形県米沢市の上杉神社には、謙信が戦場に持参した馬上杯が保存されている。馬に乗ったまま酒を飲めるよう工夫した杯で、直径12cmほどで3合は入る代物だった。
1578年に謙信は関東への出陣直前に突然倒れ、意識が戻らぬまま帰らぬ人となった。死因は脳溢血と推測されている。
偉人たちも“生身の人間”だったのである。
※週刊ポスト2018年4月20日号