2015年6月、大阪府高槻市の住宅街で、60代女性がミニチュアダックスフントの散歩中にとある事件が起きた。リードをつなぎ、いつもの散歩道を歩き出して100mほどの場所で異変は起きた。
交差点の向こうで、女性に連れられ散歩している柴犬を見た途端、突然吠え出し、全速力で走り出したのだ。飼い主の女性は、あまりの勢いに、思わずリードから手を放してしまった。
そこに偶然通りかかったランニング中の40代男性は、“暴走”する犬を避けようとして転倒。側溝に落ちて右手首を骨折してしまう。
被害者男性は6日間の入院に加え、10か月の通院を余儀なくされた。手首の可動域が狭まる後遺症も残り、2016年11月、飼い主の女性に3948万円の支払いを求める裁判を起こした。
それから1年半後の3月23日、大阪地裁は女性に対し過失責任を認め、被害者男性へ1284万円の支払いを命じる判決を下したのだ。このように飼い犬に対しては、飼い主が責任を負うことになる。果たして、どこまでその責任は問われるのか? 今回はケガを負う事態となったが、「庭で飼っていた犬が連日吠え続け、ノイローゼになったと近隣住民に訴えられた」という事態はどうなるのか。ペットトラブルに詳しい長瀬佑志弁護士が語る。
「犬が長時間吠え続けているのに、それを放置したとなれば、しつけを怠った飼い主に落ち度があると判断される可能性があります。賠償額は10万円程度と想定されますが、相手の健康状況によっては金額が増額することも考えられます。
騒音問題は、近隣住民とのトラブルにも発展しかねません。ご自身で解決できないのならドッグトレーナーにしつけを頼むなど、飼い主としての対応を考える必要があるでしょう」
騒音のほか、においにも気をつける必要がある。
「多頭飼いをしていたり、掃除を長年怠り、あまりにも悪臭がひどい場合、飼い主の責任が問われる可能性があります。それで近隣住民が引っ越しせざるを得なくなった場合も、賠償金とは別に、引っ越し費用も飼い主が請求されることもありえます」(長瀬弁護士)
ここでは全面的に飼い主の過失となるケースを見てきたが、相手が犬の場合は異なるようだ。ペット問題に詳しい行政書士の福本健一さんが話す。
「犬同士のトラブルの場合、基本的には飼い主同士の話し合いとなるが、どちらにも責任があるので線引きが難しく、『痛み分け』となることもある」
長瀬弁護士は指摘する。
「犬を放して遊ばせている時点で、お互いの犬がけがをさせる可能性があることを、お互いが承知しているかもしれませんが、それでも飼い犬の管理は尽くしておくことが求められます。また、ドッグランなどの施設では、犬同士がぶつかった時などのトラブルに関してルールを取り決めている場合もあるので、遊ばせる前に確認しておきましょう」
※女性セブン2018年4月26日号