スポーツ

伊調馨 パワハラ認定も「東京五輪で5連覇」は茨の道

記者会見で謝罪する福田富昭・日本レスリング協会会長(右端・時事通信フォト)

 第三者委員会からの調査報告書が提出され、女子レスリングの伊調馨とそのコーチに対する、栄和人・元強化委員長のパワーハラスメントの存在が確認され、4月6日に公表された。そのとき、伊調の所属する会社レスリング部監督から、練習するための場所の確保などを協力してほしいという要望があり、関係者と協議中であることも明かされた。となると、俄然、五輪5連覇への期待が高まるが、東京五輪へ向かう道は険しい道程になりそうだ。

「もともと練習相手がいなくて苦労していましたが、さらに難しいことになるでしょうね」と話すのは、レスリング指導者の一人だ。

「対人競技であるレスリングでは、練習パートナーの存在が欠かせません。とくに女子は、競技人口が少ないこともあって、強い選手ほどパートナーの確保に苦労しています。男子選手にお願いするにしても、引き受けてもらうのは簡単ではありません」

 日本で五輪を目指すレスリング選手は、男女問わず出身大学を拠点に練習を続けることが多い。というのも、大学卒業後もレスリングを続けられるのは五輪を狙える限られた選手だけのため、レスリングチームを抱える企業などで独自の練習場などの環境を持つところがほとんどないからだ。練習パートナーについても同じように、出身校を中心にお願いして確保するのが通例で、その母校に頼れなくなった場合、とたんに確保が難しくなる。

 女子レスリングの場合、競技人口が少ないため、全階級の選手をまんべんなく抱えているのは至学館大学くらいだ。全国的にみれば東京近郊の高校や大学にも女子選手がある程度所属しているが、一つの大学や高校だけではかなり小規模になる。そのため、所属を横断したミニ合宿や合同練習を繰り返し実施して、人数の少なさをカバーしている。

 それでも60kgくらいの階級あたりからは、全日本選手権への出場選手ですら片手で数えられるくらいしかいないため、練習相手不足が慢性化している。また、自分と同程度の強さを練習相手に求めて、近隣の男子高校生や大学生に声をかけたり、仕事として練習パートナーを男性にお願いすることもある。選手層が薄いため、女子選手が相手だと競り合う展開の練習が難しくなるからだ。

 そのため、伊調は五輪銅メダリストの田南部力コーチと積極的に練習を重ねていたのだが、今は練習相手になってもらうのが難しい。人事異動によってレスリング部の所属ではなくなったため、通常の勤務があり、かつてのように日常的に練習をみてもらうのは不可能だからだ。

「強くなるためには、練習相手にもそれなりのレベルを求めるのが普通です。そう考えると、伊調さんの場合はやはり、男子選手にお願いしたいでしょうけど……。伊調さんに協力的だと周囲に判断されるのを、気にしない人というのは限られるでしょうね」(前出の指導者)

関連キーワード

関連記事

トピックス

『マモ』の愛称で知られる声優・宮野真守。「劇団ひまわり」が6月8日、退団を伝えた(本人SNSより)
《誕生日に発表》俳優・宮野真守が30年以上在籍の「劇団ひまわり」を退団、運営が契約満了伝える
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト
インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン
アーティスト活動を本格的にスタートした萌名さん
「二度とやらないと思っていた」河北彩伽が語った“引退の真相”と復帰後に見つけた“本当に成し遂げたい夢”
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、小泉家について綴ります
《華麗なる小泉家》弟・進次郎氏はコメ劇場でワイドショーの主役、兄・孝太郎はテレビに出ずっぱり やっぱり「数字を持っている」プラチナファミリー
女性セブン
調子が上向く渋野日向子(時事通信フォト)
《渋野日向子が全米女子7位の快挙》悔し涙に見えた“完全復活への兆し” シブコは「メジャーだけ強い」のではなく「メジャーを獲ることに集中している」
週刊ポスト
1966年はビートルズの初来日、ウルトラマンの放送開始などが話題を呼んだ(時事通信フォト)
《2026年に“令和の丙午”来たる》「義母から『これだから“丙午生まれの女”は』と…」迷信に翻弄された“昭和の丙午生まれ”女性のリアルな60年
NEWSポストセブン
6月2日、新たに殺人と殺人未遂容疑がかけられた八田與一容疑者(28)
《別府ひき逃げ》重要指名手配犯・八田與一容疑者の親族が“沈黙の10秒間”の後に語ったこと…死亡した大学生の親は「私たちの戦いは終わりません」とコメント
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト