揉め事を丸く収めるのが法律家の仕事だが、当事者がその判断に納得するとは限らない。「妻が食事を作らないので離婚したい」という相談に、弁護士の竹下正己氏は「離婚事由にならない」と過去に回答したが、相談者は納得がいかないという。相談者のこの訴えに、竹下氏はどう答えたのか?
【相談】
以前、「妻が食事を作らない。離婚できないか」の相談に竹下弁護士は「コックと結婚したのではないのだから、離婚事由にはならない」と回答。しかし、旦那は必死に働き、その疲れを妻の作る食事で癒されたいのです。これは妻側の横暴でしかなく、離婚できるはず。竹下弁護士は女性に甘くないですか。
【回答】
ご愛読ありがとうございます。私は「奥さんの料理拒否がきっかけで、互いの愛情が失われ、その結果、別居しているといったような場合には離婚事由を認めてもらえる可能性はないとはいえません」と回答しました。要するに、食事を作らないということだけでは離婚できないとの意見です。
こんな例がありました。専業主婦が子育てを終えた頃から、食事の用意をしなくなり、そのうち掃除も洗濯も一切しなくなりました。多忙な商社マンの夫が帰宅後や休日に必要な家事をする状態で疲れ果ててしまい、家を出て離婚を決意し、妻に自宅等を財産分与する内容の調停離婚になりました。
別の件では夫と共同して起業した妻が、事業が軌道に乗ってリタイヤし、専業主婦になってから、物が捨てられなくなり、家中がゴミ屋敷に。外出も一切せず、食事を作らないどころか、すべて出前でした。訪問しても玄関先に古新聞が山積みで中に入れないという状態。精神的な治療を勧めても異常であるとの病識があるため、病気ではないと変な理屈をいって聞き入れず、頑なでした。