埼玉県鶴ヶ島市で2017年11月、小学6年生の女児Aさん(当時11才)が、自宅2階から飛び降りて自殺した。Aさんは一人っ子で両親と3人暮らし。4年生の2月にこの小学校に転校してきた。5年生の秋から、「悪口を言う」「ばい菌扱いする」「避ける」などクラスメートからのいじめが始まったという。
自殺から5か月、ネットの掲示板では地元の保護者たちが書き込んだとみられる「いじめをしたBさん、Cさんがどこの中学校に進学するか」という情報交換が盛んに行われていた。
保護者の一人が話す。
「いじめていた子と自分の子が一緒になったら、いじめられるのではないか、という恐怖心があるようです。ネット上では、Bさん、Cさんと言われる実名や顔写真が晒されては消されるということが繰り返されました」
いじめた側の子供が、どのような“制裁”を受けるべきかは、騒動があるたびに大きな議論になってきた。
米ニューヨーク州のある都市では、昨年10月、いじめた子の親が実刑を受けるという条例ができた。「16才未満の子供が90日のうちに2回、いじめをしたら、その子供の両親が250ドル(約2万8000円)の罰金を払うか、最大15日間刑務所で過ごすか、またはその両方が科される」という内容で、親のいじめへの意識が高まり、いじめの抑止力になっているという。
今回の鶴ヶ島市のケースでは児童相談所への通告が行われた。どのような対応を受けるのか。
「通告後、児童相談所は関係者や保護者から話を聞いて実際に何が起きていたのかを調べます。家族が相談に応じないこともあるので、家庭訪問もします。加害児童だから警察に送るとかではなく、児童の福祉にとって最善の道を模索します。その結果、家族から児童を引き取り、児童相談所で保護することもあります」(児童相談所関係者)
脳科学者の中野信子さんの著書『ヒトは「いじめ」をやめられない』(小学館新書)によると、いじめについて、《人の集まるところでは、必ず起こりうるという意識を持つことが大切》であり、いじめが根本的になくなるということはない。そのため、いじめの被害が想定される状況を発見した場合は《離れてしまう以外ない》という。
大切なのは立ち向かうよりも“逃げる”こと。充分に時間的、空間的に距離をとった後であれば、高まった「妬み」や「排外感情」はわかなくなると考えられるという。例えば、週に3回学校に来て、週に2回はインターネット授業を受けるといった柔軟な避難措置をとるなどで対処すべきだという。
報告書ではBさんCさん以外の他の児童についてもこう触れている。
「いじめがあることを認識していながら教員などに相談しなかった児童らも無関係とはいえない」
子供だからと許されることではない。
※女性セブン2018年4月26日号