歴史に名を残す偉人は、みな子どもの頃から秀でていたのかと思いがちだが、中には若い頃は全くの無名で、歳を取ってから一気にスターダムにのし上がったタイプもいる。
戦国時代の先駆者とされている北条早雲(1432~1519)の場合、30代まで何をしていたかが分かっていない。何もバックボーンが無い状態から戦国大名に成り上がる。
「一片の土地すら持っていなかったのですが、40代になって駿河を治めていた今川家の遠戚として頭角を現わし、55歳にして今川家の家督争いを決着させ、初めて所領を得ました。その後、61歳で伊豆を治めていた足利茶々丸に“伊豆の討ち入り”を仕掛け、63歳で小田原城の城主に上り詰めた。戦国時代のきっかけを作ったとされ、『下克上』の代名詞的存在なのです」(歴史作家の山村竜也氏)
三井財閥の祖・三井高利(1622~1694)は豪商・三井家の出身だが、四男だったため、長く兄の店で働いたりしていた。
「兄たちに除け者扱いされ、不遇の時代が長かった。郷里に帰されたのですが、それも兄たちに疎まれたからだといわれています。転機が訪れたのは、51歳の時。長兄が亡くなり、母親の許しを得て江戸で呉服屋を開業。屋号を『越後屋』としました。持ち前の商才が開花し、それまでなかった『現金掛け値なし』(現金払いでの定価販売)、反物の切り売りなど、新しいサービスを打ち出し、大成功しました」(山村氏)
不遇でも腐ることなく、チャンスを待ち続け、“人生の大逆転”につなげたのだ。
※週刊ポスト2018年4月27日号