滋賀県彦根市のJR東海道本線・河瀬駅の駅前交番に勤務する19才の巡査が上司の井本光巡査部長(41才)を交番内で射殺するという殺人事件が発生した。
本来、警官の拳銃所持は厳格に管理されている。元北海道警銃器対策課勤務で「銃対のエース」と呼ばれた稲葉圭昭さんが語る。
「よく刑事ドラマで刑事がプライベートでも拳銃を持っていますが、現実にはあり得ません。刑事が銃を持ったままどこかの店に入ることもないし、家に持ち帰ることなど絶対にない。事件が起きて実際に拳銃の使用許可が出たら、署内の拳銃庫から取り出し、管理者が拳銃番号と刑事の番号を照らし合わせて1人ずつ拳銃を渡します。返却する際も弾丸をすべて外して別の箱に入れて戻します」
稲葉さんは、北海道警時代に100丁以上の違法拳銃を押収したその道のプロ。2016年に公開された映画『日本で一番悪い奴ら』で綾野剛演じる主役刑事のモデルになった人物でもある。
数多の闇社会の住人と接触し、時には暴力団から裏で拳銃を提供させてそれを押収するという“やらせ捜査”を経験した稲葉さんでさえ、警察官の拳銃管理は鉄壁だという。ただし、今回の事件のように、交番勤務の警官だと事情が異なる。
「交番勤務は巡回中に凶悪犯に遭遇する可能性があり、勤務中の拳銃所持が認められているんです。制服姿で拳銃を持ったままコンビニに入ることもできる。制服と拳銃を目立たせることで、犯罪を未然に防ぐねらいもあります」(稲葉さん)
全国の交番の数は約6600か所。そこに勤務する万単位の警官は、基本的に緊急時の備えと犯罪抑止のため拳銃を所持するが、例外もある。
「精神面の問題などで、拳銃を持たせられない警官も実際に存在します。上司がチェックして“こいつ、おかしいな”と判断したら幹部会議で議論し、銃を持たせないことを決めます。以前聞いた話では、全警察官の3%くらいが“拳銃不可”に該当する。今回の巡査もその範疇だったかもしれませんが、警官になって日が浅く、結果的に見逃してしまった可能性がある」(稲葉さん)
市民の安全を守る警察官も生身の人間である。精神のバランスを崩す者、素行に問題を抱える者は一定数、必ず出てくる。
その時、彼らの所持する拳銃が市民にとって恐るべき凶器になる現実を、今回の事件は改めて突きつけた。
※女性セブン2018年5月3日号