ハリウッドで日本にかわり中国が存在感を増したように見える。実態はどうか。明治学院大学文学部芸術学科教授の門間貴志氏がレポートする。
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2015年公開の『オデッセイ』は火星に取り残された主人公の生存をかけた奮闘と、助けようとする仲間の努力を描いたSF作品だ。これが日本のネットユーザーの間で物議を醸した。
物語の後半、窮地に陥ったNASAが中国国家航天局に支援を要請し、中国側が人命尊重の立場から力を貸す場面があり、それが一部の日本人に“中国に阿っている”“中国市場向けに作られている”と映ったようだ。
確かに、中国はハリウッドで存在感を増している。アニメ『カンフー・パンダ』(2008年)は中国にしかないカンフーとパンダの組み合わせで、『グレートウォール』(2016年)は万里の長城を舞台に怪物との戦いを描いた米中合作だった。
だが、日本が凋落したと捉えるのは早計だ。中国に限らず、韓国やタイ、インドなど日本以外のアジア勢が台頭した結果、相対的にハリウッド映画における日本のイメージが減少したのは事実だが、消えたのではなく以前より浸透している。