話題作の多い今春の連続ドラマ。その多くの作品の主人公に、ある特徴があった。ダークヒーローがやけに多いのだ。いったいなぜか? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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4月も下旬に突入し、22日の『ブラックペアン』(TBS系)で主な春ドラマが出そろいます。初回を見て気づかされたのは、いわゆる正義の味方という王道の主人公より、清濁併せ吞むダークヒーローが多いこと。
『ブラックペアン』のごう慢な性格と言動で「オペ室の悪魔」と呼ばれる外科医・渡海征司郎(二宮和也)、『Missデビル 人事の悪魔・椿眞子』(日本テレビ系)の悪魔を思わせる人事コンサルタント・椿眞子(菜々緒)、『モンテ・クリスト伯 -華麗なる復讐-』(フジテレビ系)の復讐の鬼となり仇敵に制裁をくだす柴門暖(ディーン・フジオカ)、『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日系)の派遣された家庭を崩壊させる女装家政夫・三田園薫(松岡昌宏)、『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)の破天荒な信用詐欺師・ダー子(長澤まさみ)。
いずれ劣らぬ、悪さやクールさの持ち主ですが、本来、新年度のスタートである春は、さわやかで熱い主人公が多かったはず。なぜ今年は春なのにダークヒーローが多いのでしょうか。
◆ブレない姿で、強さとカリスマ性アップ
王道の主人公像と言えば、正義の味方。「強く、正しく、美しい(カッコイイ)」というイメージの主人公は、物語に安定感を、視聴者に安心感をもたらします。
一方、ダークヒーローは、強さこそ同レベルながら、その言動が「正しくない」「美しくない(カッコよくない)」のが基本スタンス。また、「目的を達成するためならどんなことでもやる」という絶対的な信念で物語をけん引していきます。
実際、『ブラックペアン』の渡海征司郎は手術の腕にこだわるあまり他の医師を罵倒し、『Missデビル』の椿眞子はオフィスの問題を解決するために悪人を追放し、『モンテ・クリスト伯』の柴門暖は復讐を果たすべくかつての友人に緻密な罠を仕掛けます。
さらに、ダークヒーローたちは自らの悪さをわかっていて、周囲の目を気にせず、孤立することも恐れません。そんな「ブレない姿が強さを際立たせ、カリスマ性を感じさせられる」というメリットがあります。
もう1つ見逃せないのは、「ダークヒーローのほうが個性的に描きやすく、視聴者側に印象づけやすい」という制作サイドのメリット。その言動は、わかりやすい正義の味方や周囲の登場人物よりも、圧倒的に目を引くのです。
ただ、近年のダークヒーローは、クレームを避けるなどの理由から、序盤から「実はいい人かもしれない」という描写を入れることが多く、以前ほどの悪さは感じません。たとえば、『Missデビル』の椿眞子は、「菜々緒、悪女を超えた悪魔になる」というキャッチコピーながら、1話の冒頭に過去のトラウマや別人になったことをにおわせるシーンがありました。言わば、視聴者に「悪魔になった理由があるんだよ」と伝えておきたかったのです。
◆正義の味方を演じる吉高と波瑠にも注目