それは安倍晋三首相とたびたび衝突しながらも、政権を支えてきた盟友の“手切れ”の言葉だった。
「職責は果たすことは困難であるとして辞職の申し出があり、私としても認めることにした。以上です」
麻生太郎・財務相は短い会見でセクハラ疑惑の福田淳一事務次官を更迭した。この瞬間、「麻生さんは大臣辞任の腹を固めたのではないか」(側近)という。政権崩壊の始まりである。
2人はセクハラ問題の対応を完全に誤った。
安倍首相が訪米する前日、産経新聞は1面トップで〈福田淳一財務次官更迭へ〉と報じた。安倍首相や菅氏は批判が強まる前に更迭する方針を固めていたのだ。あのとき、福田氏を更迭していれば、政権の致命傷にはならなかったかもしれない。それを「辞任させない」と押し返したのが麻生氏だ。
「相手が出てこないとどうしようもない。福田の人権はなしってわけか?」
そう女性記者に名乗り出ることを求めた発言が猛烈なバッシングを浴び、官邸では「麻生閣下、ご乱心!」という声まであがった。麻生氏はなぜ福田氏をかばい、安倍首相はあのときに更迭方針を撤回したのか。
麻生側近は「麻生さんにすれば、福田を守ることが総理を守ることだった」と言う。