このところ政治の話題に占拠された感のある新聞紙面だが、日経新聞の経済スクープが久々に財界を驚かせた。
〈資本関係見直し検討 日産・ルノー22年までに〉(4月17日付朝刊)
日産とフランスの自動車大手ルノーは、日産が経営危機に陥った1999年以来、資本提携を続けてきた(ルノーが日産に43%、日産がルノーに15%出資)。一方、ルノーの筆頭株主であるフランス政府は近年、一貫してルノーに圧力をかける形で経営統合を迫ってきた。
これに対して両社の会長を務めるカルロス・ゴーン氏は、「資本関係を変える必要はない」と拒んできた経緯がある。
それがこの記事ではゴーン氏がインタビューに答え、「(合併も含めて)あらゆる選択肢についてオープンに考えている」と明言したのだ。驚きの変わりようである。『経済界』編集局長の関慎夫氏はこう指摘する。
「ルノーの筆頭株主であるフランス政府のマクロン大統領は、本気で日産を吸収合併しフランス企業にしようとしている。日産合併案はマクロン大統領が2015年に経済産業デジタル大臣を務めていた時からの持論で、ルノーと日産が経営統合することで、日産をフランス国内の雇用や産業振興に活用したいと考えているのです。日産側はこれまで経営統合に否定的でしたが、トップのゴーン氏はついに容認に舵を切ったということでしょう」
日産は経営危機からルノー資本を受け入れたとはいえ、その後は技術力で日産がルノーをリードし、近年は日産の“独り立ち”が期待されるようになっていた。それが一転、さらなる“仏化”が進むとなれば、日本の産業界に与える影響は大きい。
「ゴーン会長は日仏両政府の合意が必要だとしているが、直接の利害関係者である仏政府とそうでない日本政府では、発言力も本気度も全く異なってくる。シャープや東芝を見れば分かりますが、日本政府は昔と違い、国内企業を守るという意識が希薄化しています。こういう流れを見ても、残念ながら日産が事実上のフランス企業になる可能性は高まっているのではないか」(同前)
日産広報部は「報道については承知しているが、当社から言うべきことはない」とのこと。フランスからの“シルブプレ(よろしければ)”にどう向き合っていくかが注目される。