「麻生さん、世論調査を見ましたか?」──佐川宣寿・前国税庁長官の証人喚問後の4月1日、安倍晋三首相は私邸から麻生太郎・財務相に電話を入れた。共同通信の世論調査で支持率がわずかに上向いたからだ。
「よっぽど嬉しかったんだろうな」
麻生氏が安倍首相の心情を察して2人きりの電話の内容を周辺に漏らすと、朝日新聞がそれを報じた。麻生氏にそのつもりはなくても、官邸内では、「副総理が朝日に内通している」と疑心暗鬼が広がった。こうなると、末期的である。
麻生氏がここまで政権を支えてきたのは盟友としての“甘い友情”からだけではない。政治ジャーナリストの藤本順一氏が解説する。
「麻生さんとしては、総裁選で安倍総理の3選が難しい場合でも、2人が組んでいれば第二派閥の麻生派と最大派閥の細田派の数で後継総裁を決めることができるという戦略だった。
そのためには今国会の会期末まではなんとしても政権を持たせて、内閣改造人事で他派閥を味方につけなければならない。だから二階(俊博)幹事長と会談するなどして根回ししてきた。しかし麻生さんが辞任するとなれば、もう政権は持たない。総裁選のシナリオの練り直しを迫られるのではないか」
セクハラ疑惑の福田淳一・前財務事務次官の更迭は安倍首相にとって、麻生氏という虎を野に放つことにつながる。