平成の時代を体現した今上天皇のあと、皇太子はどのような天皇像を築くのか。『平成史』(小学館)を共著で上梓した元外務省主任分析官の佐藤優氏と、思想史研究者の片山杜秀氏の2人が、天皇に対する国民の意識について考える。
佐藤:譲位を来年に控えたいま、注目したいのがポスト平成の天皇となる皇太子です。今上天皇は、戦後民主主義、平和を尊重して沖縄や被災地に足を運び続けましたが、皇太子はどのような天皇となるのか。
片山:今上天皇は、天皇と前近代的神秘性の結びつきを拒み、近代民主主義の合理的世界、人間的世界にかなうように天皇像を改めていきました。昭和天皇はかつての現人神という強いカリスマ性を持っていた。しかし今上天皇にはそれがない。だから祭祀への熱心さや災害時での国民と共感共苦する人間天皇の姿を徹底的に顕示された。公と私のバランスはよくとれていたと思います。
ところが皇太子になると、もっと「私」の方につっこんでいる印象がある。
佐藤:皇太子の私という文脈で思い出すのが、2004年に雅子妃のキャリアや人格を否定する動きがあったという発言です。
片山:妻を守る姿勢は人間として素晴らしい。ただしこれは本当に戦後の普通の人間そのものなのではないかという気もします。天皇に賛成反対と外から云々する前に、天皇が天皇であるためのエートス(慣習)が戦後市民の感覚の中についに溶けて解体してきているのではないか。昭和天皇から三代目になるとそこまで行くように思うのです。