カジノを含む統合型リゾート(IR)の実施法案が4月27日に閣議決定された。カジノ解禁で当初から懸念されていた「ギャンブル依存症」対策については、7日間で3回などとする入場制限が設けられる予定だが、「それだけでは実効性がない」と断言するのは、「ギャンブル依存症問題を考える会」代表の田中紀子氏だ。果たして、ギャンブル依存症者をこれ以上増やさない手立てはあるのか。
──厚生労働省の推計(2017年)では、ギャンブル依存症の罹患者は全国で320万人いると見られている。
田中:そうですね。昨年1年間だけでも罹患している人は70万人いるとされています。
──今後、依存症になりそうな予備軍も含めたら相当膨れ上がるのではないか。
田中:忘れてはならないのは、依存症の当事者に巻き込まれている家族の存在です。例えば、当事者がギャンブルによる借金苦で死にたいと思ったら、身近な人に伝播することがありますし、子どもの教育や環境に影響が出る恐れもある。旦那がギャンブル依存症でしょっちゅう失踪したりしていると、子どもも不安定になりますしね。
そうやって巻き込まれている家族が依存症の当事者1人につき3人いるとしたら、その数は1000万人を超え、人口の1割がこの問題で苦しんでいることになります。
──「ギャンブル依存症問題を考える会」が行った調査によれば、依存症患者を抱える家族の83%が借金を肩代わりしたことがあるとの結果が出た。
田中:ギャンブル依存症がエスカレートすると多重債務を抱え、窃盗や横領、詐欺など事件化するケースも多いのですが、事件が表面化する前に家族が弁償したり肩代わりしてしまうことがよくあります。
しかし、身内を犯罪者にしたくないと慌てて借金の尻拭いをすることは、かえって症状を進ませてしまう可能性があります。連帯保証人でない限り家族に借金の支払い義務はありませんし、なにより当事者だけでなく家族も債務整理の支援や金銭管理の方法などお金に関する正しい知識を身につけ、毅然と対処しなければ効果的な対策が打てません。
依存症のリスクを少しでも減らすためには、まずは当事者に“病識”を持たせ、なおかつ周りの人たちが私たちのような支援グループにいかに早く繋げることができるかが大事なのです。身内だけでは解決できません。まずご家族が相談にきてほしいです。