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本居宣長 34歳で『古事記伝』を書き始め、完成は69歳

人生100年時代、遅咲きでもいいじゃないか

 今でこそ100歳超えは珍しくないが、織田信長が49歳で死ぬ間際に「人間50年~」と舞ったと言われているように、かつては「人生50年」だった。しかし今に名を残す偉人の中には、生涯をかけて一つの仕事にこだわり続け、50歳を超えてようやく成果を認められたケースもある。

 江戸時代の国学者・本居宣長(1730~1801)は、『古事記伝』の完成に35年もの時間を費やした。伊勢・松坂の木綿問屋に生まれた本居は、家業の不振と「商売に不向き」といわれた性格ゆえ、京都へ医学修業に出された。そこで国学者で歌人の賀茂真淵と出会い、『古事記』の研究を託された。34歳にして『古事記伝』を書き始めたが、出版は60歳。全44巻が完成したのは69歳の時だった。

「本居宣長が生涯の師・賀茂真淵と邂逅したのはたった一度きりでした。そこで研究を託され、その感動を生涯持ち続け、35年という長い年月をかけてようやく『古事記』研究で歴史に名を残したのです」(歴史研究家の井手窪剛氏)

 江戸時代の人気作家、滝沢馬琴(1767~1848)は若い頃から作家活動をしていたが、代表作『南総里見八犬伝』の執筆開始は47歳の時。28年間書き続け、75歳にして完結させた。歴史作家の山村竜也氏はこう語る。

「73歳で失明した後も、息子の妻の口述筆記で執筆を続けました。『南総里見八犬伝』は大ベストセラーになり、原稿料で暮らすことができた日本初の専業作家といわれます」

 人生100年時代を生きる現代人が、半ばを過ぎたぐらいでリタイアなんかしていたら、偉人たちに「老け込むなんて早すぎるぞ!」と叱られてしまうかもしれない。

※週刊ポスト2018年4月27日号

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