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保守層の一部から憂慮される「天皇不在の空位」は誤解が多い

生前退位は憲政史上初(EPA=時事)

 2019年4月末に決まった、皇室典範にも規定のない今上天皇の退位の儀式が、新たに「退位礼正殿の儀」と称される。その意義を皇室問題に詳しい京都産業大学名誉教授の所功氏が解説する。

「『正殿(松の間)』は皇居の中で最も重要な儀式が行なわれる場です。前回から『即位礼正殿の儀』と称した即位の礼に対応する形で、退位についても『正殿の儀』との文言を公称に入れたのは、儀式の持つ重要性を正確に位置付けたという意味で高く評価できる」

 この儀式は憲法上の国事行為とすることが閣議決定されたが、「できるだけ簡素にしたい」との天皇の意向を宮内庁は昨年12月に公表している。

 一方で、退位と即位が同日にならなかったことで、「天皇不在の空位が生じる」と、明治天皇の玄孫で作家の竹田恒泰氏ら保守層の一部から憂慮の声が上がっている。

 政府が退位と即位を別日にすることを決めたことについて、元宮内庁職員で皇室ジャーナリストの山下晋司氏によれば「天皇が自らの意思で皇位を譲るという印象を世間に与えるのを避けるため」と見られている。

 ただし、空位に対する指摘については誤解が多いと山下氏は言う。

「退位(退位礼正殿の儀)と即位(剣璽等承継の儀)の儀式の間の時間が空くことをもって“空位”と言っていると推察されます。昭和天皇は1989年1月7日の朝6時33分に崩御されましたが、今上陛下の『剣璽等承継の儀』は同午前10時でしたので3時間半ほど空白がありました。

 崩御あるいは譲位の瞬間に新天皇は即位するとされていますので、儀式までに時間的空白が生まれたとしても“空位”は存在しません」

※週刊ポスト2018年5月4・11日号

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