これも高度に情報化された社会の一側面というべきか、楽しいはずの旅行がたった一人の邪な行いで暗転することはあり得る。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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飛行機に乗る時間が迫って、タクシーや電車の中で焦ったという経験は誰にしもあるのかもしれない。そんなとき頭の中にふと、「何らかのトラブルで出発時間が遅れてくれれば……」なんて都合の良い考えが浮かぶこともある。ただ、ほとんどの人はそれは頭をかすめるだけのことだ。
しかし、実際にそれを実行してしまった男がいた。
3月21日、深圳の警察は、航空機に爆発物が仕掛けられたという通報を受けて空港に急行した。通報は、「広州発鄭州行の航空機に爆発物をもって乗り込んだ人物がいる」というものだった。問題は、通報を受けて安全検査を再度行うにしても、飛行機がすでに飛び立っていたことである。
結局、飛行機は再び広州・白雲空港に逆戻りして安全検査が行われたのであるが、当然のことだが何もみつからなかった。ほどなく通報した鄭という人物も逮捕されたという。顛末は深圳警察のSNSで発表されているが、鄭という男には刑事・民事で大変な後始末が待っていることは言うまでもない。
発信された情報には年齢が出ていないが、これほど自分勝手で幼稚な行動をとる成人男性がいるとは情けない。しかし、何といっても一番迷惑だったのはこの便に乗っていた乗客たちだろう。