NHK大河ドラマは、いつの時代も話題の中心であり、これまでも数々の名作を生み出してきた。『西郷どん』の時代考証を務める歴史学者・磯田道史氏と、映画史・時代劇研究家の春日太一氏、そして歴代最高視聴率を記録した『独眼竜政宗』(1987年)の脚本家・ジェームス三木氏が、主人公はどのように描くのがよいのかについて語り合った。
春日:『西郷どん』の時代考証は、どのように行なっているんですか?
磯田:私は自分の役割を「入り口の時代考証」と呼んでいます。脚本家、演出家、プロデューサーと何十回も会って、「西郷隆盛にはこういう逸話があって」とか「原典が読みたければこれを」なんて話をして。で、でき上がったものに関しては別の時代考証の先生が細かくチェックされている。
三木:僕の時代はそんなことなかったなァ。時代考証の方とお目にかかるのも一度か二度あったかどうか。勝手にバンバン書いちゃって、おかしいところは後で直してもらおう、と(笑い)。
春日:NHKにも自ら古文書を訳すような意識の社員は今ではそういないでしょうから、現場で処理しきれずに歴史家に外注する形になるのかもしれませんね。磯田さんは西郷隆盛の人物造形にどんなアドバイスを?