大学の進学率の上昇とともに問題になっているのが、学費をどう捻出するかという問題。近年では、奨学金の返済で首が回らなくなるケースが紹介されることも少なくないが、孫にいきなり「進学費用を出して」といわれた場合、法的に払う義務はあるのだろうか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
勘当した息子が亡くなり、彼の18歳になる娘が訪ねてきて「大学進学をしたいから、費用を出してほしい」というのです。結婚式に呼ばれず、子供が生まれたことも知らなかったのに、その孫に「金を出せ」といわれても納得できません。それでも法的には祖父が進学費用を出さなければいけないのでしょうか。
【回答】
民法877条は「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定めています。あなたと孫は直系血族で、扶養義務が生じる関係にあります。
扶養義務には次の2つがあり、被扶養者の生活を自分の生活と同程度に保持する生活保持義務と、困窮した被扶養者を余裕のある範囲で援助すれば足りる生活扶助義務です。生活保持義務の典型は未成熟児と親の関係です。しかし、成年に達していても障害があり、生活能力がない子であれば、親の扶養義務は生活保持になりますし、未成年であっても子供が働いて収入を得ている場合には生活保持義務が否定されます。
成人後の学費が問題になることも少なくありません。親の学歴や社会的地位、子の学歴の必要性、アルバイトなど自活力の有無、奨学金の受給などを考慮して個々の事案ごとに判断されます。未成年の間の学費は扶養義務の対象になることが多いようです。そして、成人後の学費は、その延長として認められることもあります。