【書評】『裁判官! 当職そこが知りたかったのです。―民事訴訟がはかどる本―』/岡口基一・中村真・著/学陽書房/2600円+税
【評者】岩瀬達哉(ノンフィクション作家)
東京高等裁判所の現職裁判官と、率直で遠慮のない関西在住の弁護士が明かす知られざる裁判所の内幕である。
怖れを知らないこの裁判官は、自身のツイッターで「赤裸々なプライベートを晒し」、常時、4万人のフォロワーがアクセスするそのカバーページには、ボディービルで鍛えた筋骨隆々の白ブリーフ姿の自撮り写真を掲載。過去に、裁判官の品位を落としたとして口頭厳重注意処分を受けて話題になった人でもある。
検事や弁護士より格上とされ、法曹界の頂点に立つ裁判官は、どのような権力にもおもねらない“正義の人”と思われがちだ。しかし彼らもまた、組織のなかで居心地よく過ごしたいと願う“普通の人”であったと知って拍子抜けさせられる。
裁判官の評価は、処理した事件件数によって大きく左右されるという。処理件数が「一覧表で配られる」ため、「誰がすごく成績が悪い」かがわかり、それが目立つようになると、「出世に影響する」。そのため少なからぬ裁判官は、真実が明らかにならなくても「理由は何とでもつけられる」ので、「粗製濫造判決」を書こうとする。“裁判の理由は真実に沿わなければならない”という法格言は、もはや「裁判官村」では死語となっているのかも知れない。