永田町で吹き出した「解散風」は大型連休中に日本列島を縦断した。「解散・総選挙は私の頭の中に全くない」──安倍晋三首相がそう否定して中東歴訪に発った連休中、トップの言葉とは裏腹に自民党本部は全国で緊急の選挙情勢調査を実施した。関西選出の自民党ベテラン議員が打ち明ける。
「党本部の緊急世論調査はうちの選挙区でもやった。財務省のセクハラ問題やモリカケ疑惑など一連の不祥事が自民党の支持率にどの程度の影響を与えているかの調査内容だが、総選挙を念頭に置いたものであるのは間違いない。たとえスキャンダル批判が強くても、全国調査の結果、自民党が選挙で過半数を維持できるとなれば政権は保てると考え、総理が解散に踏み切る可能性がある」
このベテラン議員は「もしも」に備えて選挙準備に取りかかった。解散説の表向きの火付け役は小泉内閣時代に総理首席秘書官を務めた飯島勲・内閣官房参与だった。
飯島氏は4月17日のBSフジの番組に出演して「解散の大義は関係ない。大平内閣で総選挙から7か月後のハプニング解散もあった。あれですよ」と語り、最短なら「連休明けの5月7日の週に解散、6月3日投開票」、遅くとも「6月11日解散、7月8日投開票」という具体的な選挙日程を予告して見せた。いずれも投開票日は「大安」の日曜日になる。
飯島氏に続いて、自民党幹部の森山裕・国対委員長が4月25日に「野党が内閣不信任案を提出するなら衆院を解散するのも内閣の選択肢だ」と煽ったことで解散風が一気に強まった。
政権スキャンダル批判で野党が攻勢を強め、国会が空転すると政権側から「解散論」が流されて野党を牽制することはしばしばある。しかし、官邸サイドにとって今回の解散論の狙いは野党対策ではなく、自民党内の安倍批判封じにある。岸田派の中堅議員が語る。