頭痛や腰痛など、「体の片側だけに痛みや異変が現われた」という経験のある方は多いはず。そうした症状を見過ごすと、取り返しのつかないことになるかもしれない。例えば、「左肩ばかり凝る」場合は、心筋梗塞や狭心症の疑いもある。
幼い頃に矯正された箸以外は「左利き」の杉本隆さん(67・仮名)は、最近、左肩だけが異様に凝るようになった。「長年、左ばかりを酷使してきたから、その“疲れ”が出たのかな」と考えていた杉本さんだが、痛みはなかなか治まらず、むしろ激しさを増していく。
ついに我慢できなくなって、整形外科へと駆け込んだ。レントゲンを撮ったが異状は見当たらない。だが、不審に思った医師はこう言った。
「もしかしたら心臓疾患かもしれない。紹介状を書きましょう」
紹介された大学病院の内科で杉本さんは心筋梗塞と診断された。初期だったため大事には至らなかったが、このようにただの違和感や疲れだと思っていた体の不調が、重病の兆候であるケースがある。きくち総合診療クリニックの菊池大和院長が話す。
「胸が痛ければ心筋梗塞や狭心症を疑うのは当然ですが、痛くなる部位は必ずしも胸だけとは限らない。いわゆる“放散痛”というもので、心臓から伝わる刺激(電気信号)が感覚神経と脊髄を経由して脳に伝わる際に生じます。脳が心臓の痛みを他の部位の痛みと“勘違い”して起きる現象で、左肩や左の歯など、体の左側に断続的に強い痛みが現われることが多い」
このように体調不良の“左右差”は重大な病気のサインであることが少なくないので、くれぐれも注意したい。
※週刊ポスト2018年5月18日号