2015年3月に福岡の明太子メーカー・ふくやから発売された『めんツナかんかん』。発売当初から大人気で、現在、発売3年目で350万缶を売り上げる大ヒットとなっている。ありそうでなかった、明太子とツナのコラボレーションは果たしてどうやって生まれたのか!?
ふくやの『めんツナかんかん』が福岡土産として新たな定番となりつつある。
明太子は言わずと知れた博多名物だが、お中元やお歳暮などのあらたまった贈答品としての需要が多く、お土産としての利用は比較的低かった。ナマモノである商品の性質上、冷凍・冷蔵での保存が必要なため、長時間の持ち歩きには向かないからだ。
明太子を使ったお菓子はさまざまあるが、ふくやがお土産としての需要を見込んだのは、普段の食卓に上がる“ご飯のおとも”だった。
ツナ缶と明太子という組み合わせを考案したのは現社長の川原武浩氏。開発前からお手軽なご飯のおともとして念頭に置いていたツナ缶に、明太子を添えて食べてみたところ大変おいしいということに気がついた。この確信のもと、『めんツナかんかん』の開発が始まった。
しかし、ふくやは明太子の製造メーカーであり、缶詰作りのノウハウはない。そこで、缶詰メーカーに明太子の漬け込み液を送り、缶詰工場で加工してもらうという製造方法を取ることにした。ツナ缶の製造メーカーは、マグロやカツオの水揚げ量の多い静岡県に集中している。開発担当者の柿本俊文氏は、数あるツナ缶メーカーの中から、静岡市清水区にある由比缶詰所に製造を依頼。創業当時から直営販売で明太子を売ってきたふくやと、高品質なツナ缶の製造にこだわる由比缶詰所はモノづくりの考え方も一致。すぐに協力体制ができた。
まず、ふくやの明太子商品『味の明太子』にあたるレギュラーの辛さの商品から取りかかり、次いで「辛口」と明太子を増量した「プレミアム」を発売する計画を立てた。試作段階でも明太子とツナの相性は抜群で、トントン拍子に開発は進んだ。
一方、缶詰のパッケージデザインには制限が多く、苦労があった。『めんツナかんかん』の缶詰は昔ながらの形で、現在主流となっているような缶詰の上下面に直接印刷ができるタイプのものではない。情報を入れられるのは、缶の胴回りにくるりと巻く、幅およそ2.7cm×長さ25cmの紙ラベル部分しかない。しかも、ラベルの半分は成分表示などで埋まってしまう。そこで生まれたのが語呂のいい響きの『めんツナかんかん』という商品名のみのラベルデザインだ。
こうして2015年3月に発売されるやいなや、初回出荷個数1万缶があっという間に完売。発売1年前に放送された、ふくや創業者のドラマが舞台化され、これに合わせて特別ラベルの商品を作ったこともヒットの要因となった。発案から製造まで順調に進んでいたが、「発売当初の反響は予想以上。増産計画を立てるのが実はいちばん大変でした」と柿本氏は困りつつも嬉しそうな様子で語ってくれた。
※女性セブン2018年5月10・17日号