長寿大国日本においては、介護は誰もが避けては通れない問題だ。そして必然的にかかってくるのは介護費用だ。長年介護現場を取材し、介護家族の思いに耳を傾けてきた介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんはこう語る。
「よく“介護にはいくら費用が掛かるか”と聞かれますが、そうではなく、まず“いくら掛けられるか”です。介護は親の生活を支援するものですから、基本的には親のお金を使うのが筋。年金などの収入や貯蓄などを確認し、そのお金で“どんな介護ができるか”を模索しましょう。できればお金のことは親が元気なうちから話し合い、介護を担うきょうだい間でも把握しておくのがおすすめです」
親世代が介護を担った時代までは、ごく日常の流れの中に介護があったけれど、今はたくさんの選択肢の中から子が親に代わって“選ぶ”場面が増えた。迷い、悩む局面だ。
「まず子世代が、自分の立ち位置を考えることが大切です。自分は親に対して何ができて、何ができないか。子の心情としてやりたくないこともしっかり自覚する。その上で、親が望み、必要とする助けを、自分やきょうだいの力と介護保険サービスなどを組み合わせて過不足なく担う。そのプランニングが、今時の介護の形ともいえます。
自分の時間の多くを割いて身体介護することも、遠距離でも親の気持ちをくんだプランニングで、安心な生活を確保することも同じくらい尊いけれど、親の状態は刻々と変わっていくので、考え続けるしかない。正解はありません。ですから完璧な満足や納得を追求するのではなく、親も子も“まぁこのあたりでよしとするか”くらいのゆとりを。
要介護になった親が自分本位のことを言い放つこともあるかもしれませんが、どんな親も心の奥で望むのは子供の幸せです。もし悩んで行き詰まったら、そこへ立ち戻って考えてみてください」(太田さん)
※女性セブン2018年5月10・17日号