かつて「女性のわき毛」は立派なセックスシンボルとして捉えられていた。1952年に上映されたイタリア映画『にがい米』の主演女優、シルヴァーナ・マンガーノのわき毛に興奮したと語る男性は数多い。
日本でも日活の看板女優だった筑波久子、“和製マンガーノ”と呼ばれた松竹の泉京子らが銀幕でわき毛を晒し、男性の視線を釘付けにした。
そもそもわき毛は、わきにある性ホルモンと関係の深いアポクリン汗腺を守るためにある。男性が女性のわき毛に惹きつけられるのは根拠があるのだ。では、なぜ女性のわき毛は処理されて当然となったのか。
わき毛の処理が一般的になったのは1915年頃、アメリカのファッション誌で「夏服を着るならわき毛を処理しよう」という広告が出てからといわれる。これを受けてアメリカでわき毛処理のブームが起き、程なくして日本に伝わった。
日本の一般女性がわき毛処理を始めたのは1960年代頃から。この頃、国民の服装が和服から洋装へと変化した。ノースリーブを着始めたことで、これまで見えなかったわきが露出するようになり、エチケットとして手入れをするようになった。
ただ、まだ現代ほどは徹底されておらず、1963年に写真家・秋山庄太郎氏が撮影したヌード写真や、当時の娯楽雑誌『100万人のよる』のヌードグラビアを見ると、わき毛のあるモデルが散見される。
現代の価値観に近づくのは1970年代後半、脱毛も行なうエステティックサロンの増加と関係が深い。わきのみならず「女性の脱毛」がブームとなり、技術の進歩とともにわき毛の処理は常識になっていった。