撮影したその場で、すぐにプリントできるインスタントカメラ。その手軽さをスマホで体感できるプリンター『プリントス』をタカラトミーが開発した。2017年12月に発売を開始すると約3か月で、目標販売数10万台を突破。思いもよらない大ヒットの秘密を探った。
今や、写真撮影機の主役はスマホのカメラであることは多くの人が認めるところ。その一方で、撮影したその場ですぐに紙の写真ができるインスタントカメラも、スマホカメラにはない魅力で人気が再熱している。そんな現象に注目したのが、タカラトミー開発担当者の土肥雅浩さん。カメラ関係の開発に携わってきた土肥さんは、フィルムカメラを使って何かできないかと試行錯誤を繰り返した。それから約2年、2016年11月。インスタントカメラで撮影した写真をすぐに手渡ししていた楽しみをスマホで再現したいと、スマホの画面をインスタントフィルムに転写する、これまでにない商品を考えた。
早速、技術者と試作機を制作。富士フイルムのインスタントカメラ『チェキ』に手作りのスマホ台を付け、そこにスマホを載せ、スマホ画面に映し出した写真を『チェキ』で撮影してみると、予想以上にうまくいった。土肥さんは本格的な商品化に向け、スタートを切ったという。
目指したのはアプリや電池を使わないシンプルな構造だった。本体にインスタントカメラの機能を搭載。さらにインスタントカメラ用フィルムをセット。スマホ画面に、プリントしたい写真を表示させることで準備完了。本体にあるシャッターボタンを押し、本体のダイヤルを回すとスマホの写真がインスタントカメラ用フィルムにプリントされ、出てくる。どこでも使えるよう、電池を使わない手動式にこだわった。
しかし、開発当初、ダイヤル部分はトレーニングマシーン並みに硬く、ギアの調節に苦労したという。ダイヤルの巻き加減やレンズ性能など試行錯誤し、構想から1年、電池を使わずスマホの写真がプリントできる『プリントス』が誕生した。
2017年12月、発売されると、店頭に出せば売り切れる大ヒット商品となった。『プリントス』を使えば、スマホ上のアプリを使って加工した写真をプリントでき、お気に入りの写真を複数枚プリントすることができる。さらに、1回シャッターを押した後、違う写真でもう1度シャッターを押すと、2つの写真を合成することもできる。
このようにスマホの画面上とは違う、味のある写真ができることから、SNS上では「『プリントス』を使ってみた」と題して、複数の写真を合成させた“技アリ”写真などがアップされている。また、自分の好きなアニメキャラクターやアイドルなどをプリントした写真をシェアして楽しむ人など、使い方はさまざまだ。
載せて、写して、回すだけのシンプル操作で、子供から大人まで手軽に使える『プリントス』。スマホ写真を超えた作品作りも楽しめそうだ。
※女性セブン2018年5月24日号