初代内閣総理大臣・伊藤博文の妻の名、その生まれや人柄について知っている人がどれくらいいるだろうか。名前は「梅子」、芸姑として働いていたが、「総理の妻」になるや、英語を身につけるなど向上心が高かったという。一説では、“浮気者”だったという伊藤だが、そんな夫を支え続けた良妻と評価が高い。
時は移って、平成30年の今、“総理夫人”安倍昭恵さんが世間を騒がせている。なぜか。政治評論家の有馬晴海さんが言う。
「昭恵夫人の原動力は、良くも悪くも“夫のために何かしたい”ということです。2006年、安倍一次内閣の時、ブッシュ大統領夫人に『ファーストレディーは何をすればいいか』と尋ね、『自分が思うことをやればいい』と言われたのも大きかったと思います。“いろいろなところに足を向けて、総理の耳になろう”という決意があったんでしょう」
たしかに今回問題となっている教育現場から反原発の集会まで昭恵さんの行動範囲は広く、自身を“家庭内野党”と称しての発言が物議を醸したこともある。
「それもこれも、“総理が自分では行けない場所で広く意見を聞きたい”“妻だからこそ反対意見も言いたい”という、夫を思ってのことだったんだと思います。ただ、それが裏目に出てしまった」(同前)
総理夫人という特別な存在は、時の政権において常に注目されてきたことに変わりはない。佐藤栄作総理の妻・寛子夫人が当時の流行だったツイッギーのミニスカートを真似て外遊に同行した時には批判も含め話題となり、三木武夫総理の妻・睦子夫人はその発言力に「陰の宰相」のあだ名がついたこともある。
それでも、ここまで昭恵さんが注目されるのは、長期政権だからこそだと有馬さんは指摘する。
「奥さんがいなかった小泉政権以降、第一次安倍内閣、福田内閣、麻生内閣、民主党政権とどれも短命で、総理の妻もその瞬間は話題になっても続きませんでした。ただ、今の昭恵夫人はもう6年近くファーストレディーとして行動している。外遊同行が主たる仕事だった時代からも大きく変わり、注目せざるを得ない社会になっています」
※女性セブン2018年5月24日号