もし母親が「もう一度学校に行きたい!」と言い出したらあなたはどうしますか? 応援? 反対? それとも──。これは母親とともに、娘も短大に入学し、ひとつの大きな夢を叶えた、ある母娘のお話である。
「この年で母と娘が一緒に短大に入学するんだから、目立つとわかっていました(笑い)。私1人でも年がかなり上なのに、さらに母まで一緒ですから」(るりさん)
「あら、そんなに目立つと思っていたの? なんで話題になるのか、私はピンとこないのよね…」(百合子さん)
軽妙なかけ合いをするのは、この春、宮崎学園短期大学保育科(宮崎市清武町)をそろって卒業した永井百合子さん(73才)と長女のるりさん(45才)。同大学によると、母娘が同時に卒業するのは初めてのことだという。
小柄でおっとりしている母・百合子さんと、チャキチャキとはっきり話す娘のるりさん。卒業から1か月、「母の日」を前にして、対照的な母娘がともに過ごしたキャンパスライフについて語った。
埼玉で暮らしていた百合子さんが宮崎に居を移したのは15年ほど前。定年退職していた夫の道文さん(77才)が、兄が経営していた宮崎市内の幼稚園を継ぐこととなり、夫婦そろって移住。幼稚園の様子を楽しそうに話す夫の姿を見て百合子さんは“私も協力したい”と思うようになったという。そんな折、道文さんの一言が百合子さんの背中を押した。
「短大に通って、幼稚園の先生の資格を取ってみたら?」
百合子さんが振り返る。
「結婚当初、私が『いつか大学に行きたい』と言っていたのを主人は覚えていたんです。その一言で受験を決めました。私のきょうだいは『その年で何考えているの!』と驚いていましたけどね(笑い)」
一方のるりさんはこの頃、東京でトリマーとして働いていたが、将来の人生に不安を感じていた。そんな彼女に「一緒に幼稚園で働かないか」と道文さんが声をかけたという。その上、告げられたのが百合子さんも短大を受験するということだった。
「初めは20才ぐらいの子と一緒に勉強なんてできるのかと迷いました。でも、母は『私1人でも短大行く!』ってノリノリ(笑い)」(るりさん)
結局、母娘は2人で受験することを決意。社会人枠(論文と面接)で受験し、見事合格。2016年4月に入学するも、キャンパスライフは甘くなかった。