暴力問題や女人禁制問題で、世間からのイメージがどんどん悪くなる相撲協会。5月場所での失地回復に向けた期待を一身に背負うのが1月場所で平幕優勝を果たした関脇・栃ノ心だ。メディアも“大関獲りへ”と煽り立てるが、中途半端な成績の場合、現役時代に厳しい基準を突破して横綱の道を歩んだ貴乃花親方が黙ってはいないのでは、という話が出てきている。貴乃花親方からの「物言い」の可能性を鑑みれば、栃ノ心には、「文句のつけようのない成績」での大関昇進が求められる。だが、その道のりは容易ではない。
最低でも11勝(3場所合計35勝)が必要と考えれば、落とせる星は4つまで。
「関脇という番付ですから、当然ながら横綱・大関を破る必要があるが、それが難しい。対戦成績は大関の豪栄道には10勝15敗と分が悪い上に、横綱にはそれ以上にカモにされてきた」(担当記者)
カギを握るのはモンゴル2横綱との取組になる。栃ノ心は先場所こそ鶴竜から白星をあげたが、それまでは19連敗中だった(対戦成績2勝21敗)。さらに白鵬との対戦に至っては0勝25敗と全く歯が立たなかった。
「ガチンコ力士の栃ノ心を白鵬が本気で潰しにいくかどうかです。白鵬も微妙な立場に置かれている。場所前、帰化に反対していた父親が亡くなり、引退後も協会に残るための帰化申請の準備を進めているという。そうなると、本人は東京五輪まで現役を続行したいといっているものの、結果が出なければすぐに協会から引退勧告を突きつけられることになる。
なにしろ、給料に加えて場所ごとに支給される『褒賞金(過去の勝ち星数や金星数などから算出)』が、白鵬の場合は1場所で771万円にのぼる。鶴竜や稀勢の里が100万円台ですから飛び抜けた額。それだけに、勝てなければ“金食い虫”として協会から厳しい目を向けられる。
そうしたなかで思い出されるのは、稀勢の里が大関時代、綱取りのかかった2016年9月場所で白鵬が休場し、“(綱取りの)チャンスをものにしてもらいたい”とコメントした時のこと。白鵬も全盛期の力はなくなり、協会の意図を忖度する様子があるわけです。当時の稀勢の里と同じように、協会が昇進を渇望する栃ノ心に対してはどういう対応になるのかも興味深い」(同前)
今場所も、土俵上と土俵下で様々な思惑が交錯する場所となる。
※週刊ポスト2018年5月25日号