安倍政権は役所のスキャンダルで集中砲火を浴び、国会が空転したため重要法案をほとんど成立させていない。安倍晋三首相の3選もどうなるか分からない中、政権を支えてきた実力者たちはカジノ法案など「利権の果実」を手にするべく駆け込み成立に躍起になっている。
「政権の果実」の収穫を急ぐという点では安倍側近たちも負けてはいない。側近筆頭格の下村博文・元文科相や、馳浩・元文科相ら安倍首相の出身派閥・細田派の文教族議員たちが推進しているのが大学や専門学校など高等教育の授業料無償化だ。
文教族の政治資金基盤である私立大学は少子化でいまや4割が定員割れのうえ、大学を経営する学校法人の4割、短大は6割が赤字経営とされる。このままでは「大学倒産時代」が到来するのは避けられない。
安倍首相は昨年の解散・総選挙で消費税率10%への増税を予定通り来年10月に実施するかわりに、税収の使途を見直して教育無償化にあてると公約した。自民党の教育再生実行本部(馳本部長)はその具体策として大学や専門学校の授業料(私大は年間最高120万円まで)を国が負担し、学生が卒業後、収入に応じて返済する「出世払い」制度の創設を政府が6月に発表する「骨太の方針」に盛り込ませようとしている。
学費を無償にすれば進学率が上昇し、少子化でも赤字経営の大学に学生が集まるだろうという、税金を使った大学救済策だ。
「骨太の方針に盛り込みさえすれば、自公政権が続く限り総裁選で誰が総理・総裁になっても来年度予算編成で優先的に予算がつけられる。大学教育に大変理解のある安倍首相のうちになんとしても高等教育無償化に道筋を付ける必要がある」(文教族議員)
私大の中で「安倍政権が倒れる前」に大きな果実を得たのは、“お友達”が経営する加計学園だろう。