世界中で大ヒットしているヒーロー映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』が、日本では週間観客動員数1位の座を奪えずにいる。1位の座を譲らないのは『名探偵コナン ゼロの執行人』で、累計動員519万人となり5週連続1位。もともと人気が高い名探偵コナンの劇場版アニメシリーズだが、今作は桁違いの大ヒットとなりそうな気配だ。アニメ評論家の藤津亮太氏が、その特大ヒットの理由について解説する。
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映画『名探偵コナン ゼロの執行人』が絶好調だ。5月13日までに興収は67億円を突破し、興行成績がシリーズ最高を記録するのは確実の状勢。本作は青山剛昌の同名漫画が原作で、1996年よりTVアニメがスタート。映画も本作が劇場版第22弾となる人気シリーズだ。
もとから人気のあった映画『名探偵コナン』がここまで特大ヒットに至ったのは、映画『コナン』の“地力”と人気キャラクターという“スパイス”が絶妙に組み合わさった結果といえる。
「地力」というのは、そもそも映画『名探偵コナン』が非常に幅広い広いターゲットに対応している作品だからだ。
たとえば映画『コナン』は冒頭に必ずキャラクターの紹介を含めた基本設定の説明が入る。これによって間口が圧倒的に広くなっている。さらに主人公・コナン(正体は高校生探偵・工藤新一)とヒロイン・毛利蘭を中心に恋愛要素が含まれていることで、中高生以上にもファンが多い(同じく年一回映画を上映している『ドラえもん』『ポケットモンスター』などは中高生の観客はかなり少ない)。またアクション要素を含んだミステリーものなので、鑑賞後のカタルシスも得やすい。
これらの要素を大きく変えることなく20年以上にわたって積み重ねてきたことで、ファン層は今や社会人にまで広がっているのである。
そこに今回、加わったのが安室透という人気キャラクターだ。
安室透は、2012年に登場した、『コナン』シリーズの中では比較的最近の登場人物だ。その正体は、漫画連載とTVアニメで少しずつ明かされ、映画化20周年の記念作となる第20弾『純黒の悪夢』に満を持して登場。そこで一気に人気が広がった。
安室は、表向きは、喫茶店のアルバイトで私立探偵見習い。しかしその正体は「黒の組織」(『コナン』シリーズを通して出てくる謎の組織)に潜入捜査官として入り込んでいる公安警察という設定だ。声を『ガンダム』のアムロ・レイ役などで知られる古谷徹がクールに演じているのも注目点だ。
浅黒い肌に金髪という一見軽そうに見える外観ながら、洞察力は鋭く、愛車RX-7をスーパーテクニックで操るその姿は、女性を中心に人気を集めている。安室を主役にした公式スピンオフ漫画が連載開始となった「少年サンデー」24号は入手が困難になるほどで、安室とコナンが表紙を飾ったアニメ雑誌「アニメディア」6月号は史上2回目の重版となった。
今回の大ヒットは、地道なブランディングと、映画20周年に合わせた原作やTVとの連動が、大きく花開いた結果なのだ。