毎年200万人近い見物客がくることで知られる東京・浅草の三社祭が、危機的状況にさらされているという──。エッサ、オイサ、エッサ、オイサ、エッサ、オイサ――地鳴りのような低い声が下町に響き渡ると、東京に初夏の訪れが告げられる。
浅草の三社祭。200万人近い見物客もさることながら、全国各地から1万人ともいわれる「担ぎ手」が集まっての神輿の練り歩きは圧巻だ。今年は5月18日から3日間、捻り鉢巻きに、半纏をまとった男たちが、濁流のように下町を駆け抜ける。
しかし、今年の本番を前にして、担ぎ手団体の幹部が頭を抱えていた。
「700年以上の歴史を持つ三社祭も、今年で見納めかもしれません。浅草寺サイドから祭りの時間と場所を制限されてしまって…」
今や東京観光の代表格になった「浅草寺」は今から約1400年前、海から引き揚げられた観音像を祀ったのが始まりだ。寺のすぐ隣にある「浅草神社」はその観音像を引き揚げた3人の漁師を祭神としているので、“三社様”と呼ばれて親しまれている。
「三社祭は、浅草神社の氏子の各町と浅草神社奉賛会によって運営されています。だから厳密に言えば、浅草寺は協力しているだけの立場。その浅草寺サイドから祭りの運営について、いろいろな“注文”がつき、“これでは来年から祭りはできない”という声が上がっています」(前出・担ぎ手団体幹部)
2日目の正午に行われる「連合渡御」は、祭りの大きな見所の1つ。浅草氏子の各町の「町内神輿」の約100基が浅草寺の本堂裏広場に一堂に会し、1基ずつ出発して浅草神社で御祓いを受け、各町会を練り歩いていく。