簡素で格安な葬儀が人気となっている。中には、まったくお金のかからない「ゼロ円葬」というものまで耳にする。こうした葬儀の実態とは? 浄土宗僧侶でジャーナリストの鵜飼秀徳氏が分析する。
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葬送の簡素化が、急拡大してきている。葬送とは「死者を弔い、祀る儀礼や慣習」のこと。一般的には、葬式や墓地への埋葬などを指す。故人に対し、残された人は、地域の寺社と関わりを持ちながら、繰り返し弔いを重ねる。一般的には「死者がカミに昇華する」と言われる50回忌まで、生者と死者との関係は続けられていく。それが日本人の、死者への向かい方であった。
しかし、そうした弔いの慣習が次第に失われ、日本は「無葬社会」と化しつつある。顕著なのが、葬式の規模の縮小である。
参列者を集めないタイプの葬式「家族葬」。葬式をせずにダイレクトに火葬する「直葬」。これらの簡素な葬式はかつて、世間に死の事実を知られたくない場合に行われる「タブーな葬式」であった。だが、この5年ほどでごく一般的になりつつある。都心部では家族葬が全体の5割、直葬は3割以上を占めているとのデータもある。
また、「墓なんかいらない。遺骨は全部海に撒いてほしい」などと、墓を建立せず「散骨」を望む者も少なくない。火葬後、船をチャーターして遺骨を海に撒く葬送サービスなどがある。