音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、新作落語で活躍する三遊亭白鳥が、女性落語家が演じるように創作したりアレンジした噺を演じる落語会の企画を通して、女性の落語ゆえの面白さについて解説する。
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2010年に出した僕の落語家インタビュー集「この落語家に訊け!」で、三遊亭白鳥は「女性落語家に自分の新作落語を演らせたい」と語っていた。女性の演者は女性目線の噺をやればいい、そのために自分の作品や、女性向けに作り替えた古典を教えてあげたい、というのである。
それを落語会のプロデュースという形で具現化させたのが、同年スタートした「The Woman’s落語会」。若手の女性落語家たちが白鳥に教わった噺を演じるこの会は2015年まで12回続いた後、2016年末に2夜のスペシャル企画として復活。そして今年3月30日、久々の「第14回」が東京・内幸町ホールで開かれた。出演は三遊亭粋歌、立川こはる、春風亭ぴっかり☆、林家つる子。今、人気の二ツ目たちだ。
トップバッターのつる子が演じたのは、豆腐一家とチーズファミリーが深夜のスーパーで縄張り抗争を繰り広げる『豆腐屋ジョニー』。敵対する組織の男女の愛を柱とする奇想天外な白鳥作品に、つる子は宝塚のテイストを盛り込んで自分らしくアレンジ、楽しく聴かせた。
続いては粋歌が「落語の仮面」第4話『テレビ仮面舞踏会』。白鳥は美内すずえの少女漫画『ガラスの仮面』を落語の世界に置き換えた「落語の仮面」シリーズ連作を現在第10話まで創作しており(未完)、この第4話では、テレビで売れて天狗になった主人公(女性落語家の三遊亭花)が、罠に嵌まって総てを失う。粋歌は持ち前の演技力で一段とリアルな物語として表現し、聴き手を引き込む。さすが女性目線の新作落語の第一人者だ。