価格は需要と供給のバランスで決まる。といっても、さすがにこの事態は異常という他ない。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。
* * *
高齢化による問題が深刻化するのは日本も中国も同じである。同時に起きる少子化にともない起きてくるのが墓の問題だ。だが、同じ「墓の問題」といっても日本と中国では焦点が少し違ってくる。
というのも日本では後継ぎのいないことや地元を離れるなどして墓を維持できないという問題が深刻だが、中国では目下、墓地の価格が暴騰して手に入らないという問題が社会の関心を集めているのだ。さらに、次々に生まれる成金たちのニーズによって墓が巨大化し、どんどん豪華にもなっているという。
そもそも中国の墓不足は北京オリンピック前からの大きな話題だ。
墓に大金をかけるのを嫌ったり、故人の遺言が多様化したことを受けて、散骨や空中葬、植樹や音楽葬などさまざまな埋葬の方法が世を賑わしてきた。そうした経験もあって中国では、いま基本的に国務院の『殯葬管理条例』により、火葬後の骨を一人、ないしは二人で埋葬するに際して1平方メールを超える墓地を建ててはならないと決められている。
だが、現実には管理条例がきちんと守られているとは限らないようで、巨大な墓地が目に付くという。墓の話題になりがちな清明節に『新浪網』にアップされた記事によれば、いまや墓の巨大化と墓地価格の暴騰は異常なレベルになっているという。
記事のタイトルは、〈墓地の価格が一般住宅地の数倍に 誰がその暴利をむさぼっているのか〉であった。
実例を挙げれば、北京の第六環状線の南の外側の墓地がいま、1平方メール当たり5万8000元(約100万円)の値段で売られているが、それとほぼ同じ地域で2017年に売り出されたマンションは1平方メール当たり2万5000元(約43万円)と2倍以上であり、上海浦東新区の福寿園海港陵園の墓地は1.2平方メールで約14万元(約242万円)なのにたいして、そこから4キロメートルほど離れたマンションの価格は1平方メートル当たり3万元(約52万円)から3万5000元(約60万円)とおよそ4分の1だという。
いったい何でこんなことが起きるのか。
記事では墓を売っている不動産会社を追跡し、香港で有価証券報告書を見てみると、なんと2017年の粗利益率は81.9%、2016年に至っては82.2%であったという。笑いが止まらないとはこのことだろう。