「孤独本」が空前のブームだ。昨年7月に発売した五木寛之氏の『孤独のすすめ』は30万部を突破、下重暁子氏が今年3月に上梓した『極上の孤独』は27万部と刷りを重ねている。
そうした両書の読者層は60代以上が中心。妻や家族に囲まれた一見“孤独とは縁遠く見える人”、あるいは“今後の生活で孤独を恐れている人”たちである。『極上の孤独』の著者・下重暁子氏はいう。
「孤独を肯定する本が受け入れられているのは、それだけ孤独と向き合う必要性を感じている人が多いからだと思います。日本人には“孤独嫌い”が多く、孤立、孤食、孤独死と、孤独にはあまり良くないイメージがつきまといます。しかし人間とは、たくさんの人に囲まれてさえいれば幸せなのでしょうか。多くの友達と交際している社交的な人が精神的に満たされているとは限らないでしょう。
人は皆、本質的には“ひとり”なのだと思うのです。特に定年になって会社や組織を離れればひとりで過ごす時間は必然的に増え、高齢になるほど妻や家族、友人たちとの別れにも直面します。その中で“孤独とどう付き合っていくか”と考え始める人が多いのではないでしょうか」
下重氏が語るように「老い」と「孤独」は切り離せない。しかし、現実には「孤独でいること」に対する世間の風当たりは強い。
様々なメディアで「子や孫に恵まれ、頻繁に連絡を取り合う仲良し家族」や「友人たちに囲まれて趣味を楽しむ充実した老後」の素晴らしさが喧伝される一方、そうでない人は「かわいそう」という目で見られたり、「変わり者」扱いされることも多い。