マンション市場に停滞感が広がっている。価格の高騰からか首都圏でも近畿圏でも新築マンションの売れ残りが多くなっている。こういう市場環境では、一般のエンドユーザーがマンション選びに失敗しやすくなる。つまり、買ってはいけないタイプのマンションを、相場よりも高く買ってしまう確率が高くなるのだ。
では、そういった失敗を避けるにはどうしたらよいのか? 住宅ジャーナリストの榊淳司氏に、マンション購入でやってはいけない「10か条」を挙げてもらった。
* * *
(1)完成在庫を値引きなしに買う
建物が完成しているのに依然として販売が続いているマンションが完成在庫だ。デベロッパーとしては早く売り切ってしまいたいと考える。
だから、完成在庫ならば値引きが行われるのは当たり前。しかし、値引きしないで売れるものなら売りたい、というのも本音。だから、客から値引きを求められないと交渉に応じないケースが多い。
完成在庫の購入を検討しているのなら、必ず値引き交渉を仕掛けるべきだ。値引き幅は最低ラインが100万円。完成在庫である時期が長ければ長いほど値引き幅は広がる。1年以上完成在庫になっているのなら1割以上の値引きを目標にすべきである。
ただ、デベロッパーの中でも大手財閥系の1社と新興カタカナ系の1社は、値引きをかたくなに拒否する。市場価格に合わせることをしないわけであるから、こうした会社からは基本的に買ってはいけないということだ。
(2)借地権物件を買う
マンションの敷地は、通常は「区分所有者の共有」である。つまりは所有権。しかし、まれに敷地が「借地権」とか「定期借地権」となっているマンションもある。そういう物件は基本的に避けるべきだ。なぜなら、資産価値が不安定だから。つまり、中古マンションとして売却する場合に、所有権でないことを嫌がられるので売りにくくなる。
借地権には普通の「借地権」の他に「定期借地権」や「旧法借地権」がある。他に「地上権」というのもあって少々複雑。これら権利の強さに多少の違いはあるが、所有権でない場合はすべて避けるべきだ。
(3)駅徒歩11分以上を買う
「駅徒歩10分」と「駅徒歩11分」の差は「1分」ではない。そこには刑務所の塀くらいの壁があると理解すべきだ。理由は「駅徒歩10分」は「徒歩10分以内」の検索範囲内だが、「駅徒歩11分」は範囲外。
中古マンションを探している人の中で、今なら「駅徒歩15分以内」まで広げてくれる方は全体の何割かいる。しかし5年後あるいは10年後、「駅徒歩15分以内」まで広げてくれる人の割合は急減するはず。
その理由は、住宅の余剰感が深まるので希望にかなう物件は「徒歩10分以内」で見つかってしまうから。そうなれば「徒歩11分」の物件は中古市場で存在しないのと同じである。